第3部 マキシマム ザ ホルモンのナヲさんと塚田先生のトーク

娘を持つ親として「考えたい・知りたい生理のこと」

 第3部は、11歳と5歳のふたりの娘さんの母親でもあるマキシマム ザ ホルモンのナヲさんが、産婦人科医の塚田訓子さんと「娘を持つ親としてみんなと考えたい、知りたい生理のこと」をテーマにディスカッションしました。(司会は日経BP総合研究所の黒住紗織)。

娘と生理の話をどうやってする?

ナヲさん
ナヲさん
1975年生まれ、東京都出身。ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」で“ドラムと女声と姉”担当。2010年に長女、2016年に次女を出産。5歳と11歳の娘のママであり、ちょうど、娘の生理との向き合い方を考え始めたタイミング。

司会 ナヲさんは、娘さんと生理(月経)の話はしていますか?

ナヲさん 去年、緊急事態宣言中の自粛期間のタイミングで話しました。長女は5年生で背が高いので、初潮(初経)が早いかもと思い、「そろそろかな?」というタイミングでした。ふたりでお風呂に入っているときに、私がちょうど生理で出血していたので、今がチャンス! と。お風呂の鏡に子宮や卵巣の絵を描いて、生理のしくみを話しました。ママ友に聞くときっかけが作れず困っている人が多い中で、娘がすんなり話を聞いてくれてよかったなと思っています。

塚田さん 入浴時は生理のことを話すのに、とてもいいタイミング。女性は月1回、生理が来て出血することを、初経が来る前に伝えることは大切ですね。

ナヲさん 私の母は、弟が小さいときにトイレで経血のついたナプキンを見せて(笑)、「女の人は血が出るの。その血は赤ちゃんを産むために大切なの。そのために、おなかが痛いときも、機嫌が悪いときもあるのよ。だから、女の子は守らないとダメなのよ」と弟に話していたそう。ずっと後になって弟から聞いた話ですが。だから、私も娘にはちゃんと話したほうがいいかな、とずっと思っていました。

塚田さん 今、学校によって多少プログラムは違いますが、小学校4年生のときに、生理のことを教わることが多いですね。性教育は男女一緒に行うことが多いので、男の子も生理の話を聴いています。私も学校で授業をしたことがあるのですが、男の子はとても優しいです。「女の子がそんなに大変とは思わなかった」とか、「どうフォローしてあげたら、助けてあげたらいいですか?」とか質問してくれるんですよ。

司会 お子さんが初経を迎える前、ナヲさんの家では、お父さんと生理の話はしていましたか?

ナヲさん 事前に、生理がそろそろ来る年齢だというようなことは話していましたが、初潮になったのがちょうど私が不在のときで、娘が慌ててしまったみたいです。ナプキンのある場所は伝えてあっても、使い方や捨て方なども含めて、細かくレクチャーしておかなかったから……。そうしたら、パパもパニックになってしまって。娘にも夫にも、もっと具体的なことを教えておけばよかったと思いました。そんなことがあったので、シングルファーザーのご家庭は困るだろうなと思って、娘と父子家庭のお嬢さんに“生理ナプキンの使い方教室”をやりました(笑)。

塚田さん いいですね~。シングルファーザーのご家庭では、信頼できる女性の友達に話してもらうとか、養護教諭に話してもらうよう頼むのもいいと思います。

ナヲさん 男の人といえば、私は生理痛が辛くないのですが、周囲には生理痛の重い女性もいるので、男性スタッフに「生理痛が軽い私みたいな人ばかりじゃないんだよ」と伝えたこともあります。

塚田さん それは母子関係にも当てはまります。お母さん自身が生理痛がない場合、「うちの子は異常ですか?」と聞かれますが、「生理は一人ひとり違います。お母さんは生理痛が少なくてラッキーでしたね」と話します。男性にも女性にも、生理痛が重くてつらい人がいることを知ってほしいですね。

どの程度の痛みで薬を飲むべき? 生理痛は遺伝するか?

司会 ここから、ナヲさんが先生に聞きたいことコーナーです。

ナヲさん 生理(月経)の痛みや量などは、遺伝しますか?

塚田さん 生理痛は必ずしも遺伝とは言えません。人によって、体質によって異なります。そのため、お母さんの生理が軽い場合に、娘さんの生理痛のつらさを理解してあげられないケースがあるのです。

ナヲさん どの程度の生理痛で鎮痛剤をのめばいいですか?

塚田さん 痛いときは、すぐにのむことが大切。痛みがひどくなってからだと、効果が出るまでに時間がかかることがあります。むしろ、生理で毎回痛くなる人は、痛くなりそうと感じた時点で、たとえ生理前でものんでいい。痛みを我慢しないことが、のむタイミングのコツです。

初経が来たら、婦人科へ行こう!

司会 今日の参加者で「親子で婦人科に行ったことがある」という人は22%でしたが、海外では、初経が来たらまず婦人科に行くという話を聞いたことがあります。

塚田さん 日本でも、初経が始まったら、婦人科のパートナードクターをもってほしいと思います。月経のことだけでなく、性教育など親子でしづらい話題も婦人科に連れて来てくれればお話しできます。内診は必ずしも必要ではありません。女性の体の話を聞きに、婦人科をぜひ利用してほしいです。

ナヲさん 娘が親や友人には言えないことを相談できるように、私も娘を早めに婦人科に連れて行こうと思いました。プロフェッショナルに話を聞けるのは親として心強いことです。でも、いつごろ連れて行ったらいいのかがわからなくて。

塚田さん 受診のタイミングは、月経痛や体のこと、ちょっとでも心配なことがあればぜひ来てください。ひとりで受診しても大丈夫です。心配なら最初だけお母さんと一緒に、あとは小学生でもひとりで来院している子はたくさんいます。

司会 中高生の娘に急に生理の話を切り出すのが気恥ずかしくて話をしにくい、という親御さんに、『自分の生理が正常かそうでないか』をチェックするシートをご紹介します。「生理でこんな症状で困っていない?」と娘さんにチェック項目を見せて、話のきっかけに活用してほしいです。生理快適プロジェクトのサイトから無料でダウンロードできます。

塚田さん とにかく生理痛は我慢しないでください。そして、婦人科と仲良くなってください。最初に行った婦人科が万一、合わなくてもあきらめないで。必ず、心が通い合う婦人科医がいます。私たち婦人科医は、全力でサポートします!

ナヲさん 私も娘を連れて婦人科に行きたいと思います! みなさんもぜひ、お子さんと一緒に産婦人科に行って、先生との関係を作ってあげてほしいなと思いました。男性の理解も大切です。男性のみなさん、サポートをよろしくお願いいたします!

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生理快適プロジェクトとは?
毎月の生理がつらい人。それは仕方ないとあきらめていませんか? つらい生理は放置しないできちんと対処すれば、いまよりもっと心も体も快適になって仕事の生産性も上がります! そう。女性が、自分の体と生理のことをきちんと知ることが「女性の働き方改革」の出発点。生理快適プロジェクトは、つらい生理で悩む女性を減らすために、正しい情報を届ける活動をしています。

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取材・文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
撮影/稲垣純也 構成/黒住紗織(日経BP総合研究所)