33歳。ワインスクールで会社経営の気づきを得る

清明 私は2011年にグループ内のマネックス・ハンブレクトの社長になりました。就任とほぼ同時に通い始めたワインスクールも、思い出深い自己投資です。

当時私は33歳で、「社長業?何から始めよう」と戸惑いはありました。それまでと異なり、会社の代表となれば自分だけが頑張っていても物事は動きません。考えるほど答えがよく分からなくなり、よし、まず外に目を向けてみようと思い立ち、選んだのがワインスクールでした。

――経営指南書を読む前にワインスクール?

清明 はい。会食が増え、ワインの知識を身に付けると相手の方をよりおもてなしできるというのも理由のひとつです。しかしスクールでは互いに身分を明かさずワイン好きという共通点だけで時間を共有できます。この点が重要でした。雑談から「なるほど、組織では皆、こんな悩みを持って仕事しているんだ、こんな夢があるんだ」といった気づきが多々あり、現場を身近に感じ理解する場でした。

仲間と一緒に、私も12年にワインエキスパートの資格も取得しました。社長就任が11年でしたのでさすがに会社には内緒にしていました。最近、松本(マネックスグループ株式会社代表執行役社長CEOの松本大氏)に知られ、「え? 就任早々、暇だったの!?」と驚かれました(笑)。

私の使命は「みんなのマネックス」を創ること

――2019年、マネックス証券の社長に大抜擢され、一段とタフになられたのではないでしょうか。

清明 就任後、「松本大さんというカリスマ経営者の後だから大変でしょう」といった言葉をたくさんいただきます。しかし、私は以前から、タイトルが上がっていくことに対してのプレッシャーは、あまり感じないようにしています。

社長という肩書があっても証券の知識は社員の方がはるかに豊かですので、常に社員に相談し教えてもらいながら仕事を進めています。自分にとって、女性社長のロールモデルもいませんので、管理的な内容でも「私はこういうスタンスですが、あなたはどう思いますか」と声をかけます。物事の決断はとても早いので、今日やると決めたら必ず時間内にやり切り、悩むべきことは別に時間を取って熟考します。

休日は登山かランニングかゴルフをして過ごし、睡眠は毎日6時間とるおかげで、冷静なジャッジができます。私の使命はこの好循環の中でお客様や社員との対話を大切にしながら「みんなのマネックス」を創ることだと考えています。