ハンドルを握らなくて良い、自動運転技術も夢じゃないかも?

中野 次のメリットが「低遅延」ですね。現在の4G LTEだと、だいたい10msほどの遅延があるのですが、5Gだとこの10分の1。つまり1msほどしか遅延しません。

――うーん、数字でいわれても素早さが実感できません。

中野 そうですね……たとえばスマートフォンのアイコンをタッチして反応するまでの速度がだいたい10msだといわれています。本当に一瞬ですね。

――それはかなり早いですよね! 5Gだと、その10倍遅延がないということですが、遅延がないことによるメリットってなんなんでしょうか? スマートフォンのゲームがサクサク動くとかでしょうか?

中野 低遅延によるメリットで今一番注目されているのは自動運転技術への応用ですね。いま日本では運転者のサポートをする「運転支援」が普及してきていますが、これをさらに進化させたのが自動運転です。自動運転の際に車が道路状況などを瞬時に判断したり、次にどういった動きを指示するかを素早く行うため、自動運転に低遅延は絶対必要な要素となります。

――たしかに「前方に人がいるから緊急停止」という指示が通信の遅延で遅れたら人の命にもかかわってしまいますね。

中野 そのほかにもスマートファクトリーでの使用なども期待されています。遅延が少ないので遠隔地からの工場内のロボットの操作なども可能になるはずです。

家電もスマートフォンもみんなインターネットにつながる未来

中野 最後の「多数同時接続」は名前のとおり、多数の端末を同時に接続できるということですね。現在の4G LTEだと1k㎡エリア内でだいたい10万台の端末と接続できるのですが、5Gになることでこの同時接続端末数が100万台、つまり10倍の端末を同時に繋げることができます。

――これこそ、わたしのような一般ユーザーにはあまり関係ない気がします。災害時などで一斉に皆がスマートフォンを使っても安定した通信ができるくらいしかメリットが思いつきません。

中野 今、家電などがどんどんIoT(モノのインターネット)化してネットにつながるようになっていますよね。多数同時接続が可能になることで、これらの家電をすべて5Gでつなげられる可能性があります。たとえば朝にAIが交通情報をチェックし、その時間にあわせて起床アラームを鳴らしたり、炊飯器でご飯を炊き上げるといった未来も夢ではありません。もちろん、こういった未来を実現させるには5Gだけでは無理で、そういったサービスを開発するサポート企業の強力が必要にはなります。

――なるほど!なんだか夢のある話ですね。でもこの5G、まだサービスは開始されていないんですよね。せっかくの技術をすぐに体験できないのが少々残念です。