30人の参加者が5人ずつのチームに分かれ、それぞれにファシリテーター(参加者の意見を引き出す進行役)が1人加わり「アートカードゲーム」を開始。トランプの神経衰弱のようにカードを広げ、まずは出題者が好きなカードを1枚選択。他の4人の参加者が「人物が描かれているか?」など「イエスかノー」で答えられる質問をし、出題者がどの絵を選んだかを当てていきます。質問内容を相談し合うなど、参加者の距離がグッと縮まったように見えました
30人の参加者が5人ずつのチームに分かれ、それぞれにファシリテーター(参加者の意見を引き出す進行役)が1人加わり「アートカードゲーム」を開始。トランプの神経衰弱のようにカードを広げ、まずは出題者が好きなカードを1枚選択。他の4人の参加者が「人物が描かれているか?」など「イエスかノー」で答えられる質問をし、出題者がどの絵を選んだかを当てていきます。質問内容を相談し合うなど、参加者の距離がグッと縮まったように見えました

解説を読まない、否定しない、言葉で表現する

 アートカードゲームの後は、グループごとに展示室に移動して対話鑑賞の時間です。まずはファシリテーターから、対話鑑賞の効果を最大化するための3つのルールが説明されました。

1 絵の解説は読まない
→文字に頼らないで絵を見る
2 見て感じたことをどんどん言葉で表現する
→見え方は人によって違う。「これが当たり前」とは思わずに口に出す
3 人の意見を否定しない
→鑑賞に正解はない

 今回選ばれた絵は、アメリカ生まれの洋画家・野田英夫の『サーカス』(1937年)です。手前に男性1人、女性2人、背景には海岸が描かれています。まずは1分間、右から、左から、立って見たり、座って見たり。各自で静かに鑑賞した後、自由に意見を出し合います。

野田英夫の『サーカス』(1937年)を前に対話鑑賞する様子。1作品につき20分、3作品の鑑賞に計1時間を使いました
野田英夫の『サーカス』(1937年)を前に対話鑑賞する様子。1作品につき20分、3作品の鑑賞に計1時間を使いました

「この3人は家族? 家族だとしたら、仲が悪くてぎくしゃくしているはず」
「女性の孤独を表している絵ではないか」
「不安、孤独、悩みなどもやもやが描かれている」
「男性の足元に描かれている犬に違和感がある。誰の犬?」
「中央の女性の目線と、背景に描かれている海の高さが同じ。女性は外の世界に出たいという意識があるが、足元に置かれているダンベルが重しを暗示しているのでは」

 それぞれが気になった点、感じたことを語り、議論を深めていきました。特に最後の意見には「そんな見方があったとは」と、全員がハッとした瞬間がありました。自由に意見を出し合った後、ファシリテーターから絵の解説や、作者である野田英夫についての説明があり、終了です。1作品につき20分、合計3つの作品を鑑賞しました。