「老け見え」か「若見え」か。自分の見た目年齢が気になる人が少なくないARIA世代。でも「本当に大切な“魅せ方”は努力でカバーできる身体能力にこそあるのでは?」と語るフリーアナウンサーの近藤サトさん。グレイヘアにまつわるエピソードや、近藤さんが日々入念に行う口腔(こうくう)ケアなど、自分らしく生きるためのヒントを教えてもらいました。

グレイヘアにして気づいた「年齢」の呪縛

 オンライン会議などでパソコンのモニターに映る自分の顔にがくぜん。「普段、鏡で見るときより、ずっと老けて見える……」。そんなふうに感じたことはありませんか?

 「私もグレイヘアで外出するようになったばかりの頃は、ショーウインドーに映る自分の姿を見て『おばあちゃんがいるな。……えっ、私!?』と衝撃を受けたものです。浦島太郎になったようでしばらくリハビリが必要でしたね」と話すのはフリーアナウンサーの近藤サトさん。美しいグレイヘアに着物で朗らかに笑う彼女が白髪染めをやめたきっかけはアレルギーの悪化だそう。

 「当時はナレーションの仕事が中心で人前に出る機会も少なかったこともあり、ひっそりと移行していきました。『老けた』『劣化した』といったネガティブな言葉をたくさん耳にすることになるだろうな、ということはすべて想定したうえのこと。自分が老けて見えるかどうかということよりも、将来のことまでじっくり考えた末に行き着いた答えとして『グレイヘアにしても後悔はしない』という確信があったからこそ決意したことです」

立ち姿が凛(りん)として、でもどこか親しみやすさを漂わせる近藤さん。普段はほとんどお化粧もしないそう。
立ち姿が凛(りん)として、でもどこか親しみやすさを漂わせる近藤さん。普段はほとんどお化粧もしないそう。

 結果、ある日突然グレイヘアで現れた(ように見えた)近藤さんに、世間は大きな衝撃を受けました。

 「男性は面白いほどさーっと引いていきましたし、いきなり敬語を使われるようになったり、事務所の社長からは“まだ大御所感が足りないからやめてくれ”と言われたり。女性性を投げ打った、と言われてあぜんとしたことも。こんなにも私たちは年齢にとらわれているのか、と実感したのです」

道のりは険しいけれど、すがすがしい到達点が必ずある

 年齢ごとにふさわしいイメージが規定され、そこから外れているものに拒否感を持つ人もまだまだ多いと近藤さん。特に年功序列の会社組織で生きていくためのセルフプロデュースは特殊だと感じているそう。40代前半でグレイヘアにチャレンジしたものの、男性上司に嫌がられたという相談なども寄せられているといいます。

 「『私は勇気がなくて』とおっしゃる女性もいるのですが、グレイヘアは単なる選択肢の一つ。その人が置かれている社会がどのようなものであるかが大事ですし、フリーランスの私ですら受け入れられるのかという不安は大きいものでした」

 グレイヘアでさっそうと歩くまで、道のりは長く険しいものだと近藤さんは言います。けれどもしその道を選ぶなら、険しさの先に必ずすがすがしさが待っている、とも。

 「グレイヘアでも黒染めでも、どちらの選択肢も等しく開かれたものであればいいと思いますし、グレイヘアのいいところは、試してみて摩擦が生じたら何事もなかったかのようにまた元に戻せるところです。大丈夫、他人はすぐに忘れますから(笑)。一世一代の決断じゃなくても、そうして少しずつドアを押し引きしながら自分の望む方向へシフトするのもいいのではないでしょうか」