「佐伯式」海外でも人気 生き方指南でファンを激励

 独立時は「小柄な女性に見えた」という佐伯さんだが、それからの17年間は大活躍が続いた。2004年、自身がプロデュースした東京・代々木の総合美容施設「ビューティータワー」にエステティックサロン「サロン ドール マ・ボーテ」を開業。その後、銀座に進出してサロンとエステの学校を開校し、施術や指導をする傍ら、テレビ出演や雑誌の取材、講演会なども精力的にこなした。

 「佐伯式」は海外でも注目を集め、書籍は9カ国語に翻訳されている。近年は特に中国での人気が高く、北京や上海のイベントでも講演依頼があり、出向いていた。

 美肌術に加え、「ショウガヨーグルト」や「甘酒」など、食事で内側から肌を整えることも伝えた。さらに食文化やマナー、組織のマネジメントまで見識は広く、どんな悩みも受け止め鼓舞激励する生き方指南は、多くの人の心をつかみ、著名人のファンも後を絶たなかった。

 実は『日経ヘルス』で誌上相談をしてもらったとき、ちょっと困ったことがあった。「相談者に伝えたい思いを、漢字一文字で色紙に書いてください」とお願いすると、メッセージがびっちりと書き込まれた色紙が送られてくるのだ。誌面で用意していたスペースにはめ込むと、文字が小さくなりすぎて読めない。なんとか一文字で……とお願いしたものの、「伝えたいことがありすぎて……」と。毎回、豆粒のような字を読んでいただいた読者には大変申し訳なかったが、色紙を受け取った相談者は大いに感激していた。

日経ヘルス2010年3月号誌面から。「チズさんがいつも前向きでいられる秘訣を教えてください」という読者からの相談に、「人との競走ではなく自分の夢と競走して」とエールを送った(色紙の内容を読むには画像をクリック)
日経ヘルス2010年3月号誌面から。「チズさんがいつも前向きでいられる秘訣を教えてください」という読者からの相談に、「人との競走ではなく自分の夢と競走して」とエールを送った(色紙の内容を読むには画像をクリック)

 3月にブログで公開された動画メッセージでも、佐伯さんの「人をキレイにしたい、元気にしたい」というあふれんばかりの思いは、全く変わっていなかった。

 「もっと自分を大切にね、自分らしくなるのよ。みなさんの健康、元気、キレイは私の夢。夢は薬、諦めは毒。がんばって自分を磨いて。元気で、明るく、笑顔を忘れないで。ありがとう」

 佐伯さんの生き方は一貫していた。最後の発信となったこのメッセージも、まさに彼女が全身全霊をかけて伝え続けてきた言葉だった。

文/西山裕子(日経ヘルス編集部) ポートレート写真/稲垣純也