――コーチ・エィ アカデミアは1人1人に専属コーチがつき、電話でトレーニングプログラムを受講されるとのこと。電話での受講というのは珍しいですね。
三宅 ファシリテーション役のコーチを中心に複数の方と電話でつながってメモを取りながら50分間のクラスに参加します。朝昼夕と3つの時間帯から選べ、始業前や昼休みを使えます。朝7時に駐車場の車の中で受けたりできて助かりました。

 最初は「電話で?」と思いましたが、始めると「電話」が思いのほか効果的でした。他の受講生の顔や表情が見えると第一印象から入ってしまいますよね。でも、声だけだと、相手がどんな思いでその言葉を発しているのかに集中できる。そして私は私で、きちんと言葉だけで考えを表現しなければならない。

――なるほど。そんなコーチングを仕事の現場でどう使い、どんな効果があったかを教えてください。
三宅 「目標は特にない」と言っていた店長によくよく話を聞いてみると、「何を目標にしたらいいかが分からない」「自分には達成できない」と思っていることが分かりました。そこで課題を洗い出し、ビジョンをカラー写真のようにイメージしてもらい、それを具体的に言葉に落とし込む作業を一緒に行いました。

 例えば店長が「1時間当たりの来客数を現状の70人から100人に増やしたい」と目標を出した場合、「それが達成できたとき、アルバイトさんの働きぶり、お客様の表情、店内の様子はどう?」と質問します。すると「お客様はもちろん笑顔」「店員もにこやかで、注文された料理がすぐに提供される」といった描写が出てきました。

 その中で店長が「今のスピード感では対処できないので、皆がもう少し早く歩いた方がいい」と気づき、それを次の1週間の目標にします。来客数を約1.5倍にするという大きなゴールに向けて、短いスパンでそこまでのギャップを埋めていく感じです。

――小さな課題をクリアし続けると、イメージ通りの店舗に育っていくんですね。
三宅 その店長は「1時間当たりの来客数100人」をわずか2カ月で達成しました。その上、思わぬ波及効果もありました。私がアプローチしたのは店長だけです。しかし彼も「同じコミュニケーション方法をアルバイトさんに使ってみました」と言うんです。すると、アルバイトの方たちからも思いもしなかった意見が出て来るようになったそうです。店長は「話を冷静に聞けるようになり、スタッフ1人ひとりを大切にするようになった」とも。女性トイレなど男性の店長には気づけない部分を女性のアルバイトさんが自発的に掃除しピカピカにしてくれるようになり、私も嬉しかったですね。

――売上や数字の伸びなど具体的な手ごたえもありますか。
三宅 担当してきた地区での売り上げはずっと前年の数字を超えています。“母の日”などのイベント時の売り上げも前年の数字を超えており快進撃を続けています。お客様からのクレームが減り、逆に「従業員のこんな対応が素晴らしい」といったお褒めの言葉も急増しました。

コーチングで「人を育てたい」自分の思いに気づき、人生も変わった

――女性にとって50歳前は人生について迷いが出る時期です。三宅さんは2018年の部長という大きな昇進の前後で何か思うことはありましたか。
三宅 昨秋、東日本部長に昇進が決まり、長年見守ってきた現場から離れ、一地域の担当が北は北海道までと広大になったとき、実はかなり悩み、落ち込みました。

 コーチングのクラスでそのことを話すと、他の受講者から「現場との間に本当の壁はない。自分から折々、現場に近づいていけばいいのでは?」と言われ、霧が晴れました。コーチ・エィ アカデミアの受講仲間の言葉も心に響き、時に救われます。

 部下も自分も変わり、毎日長い時間を過ごす職場全体の雰囲気も変わりました。コーチングのおかげで人生も仕事もいい方向に進んでいます。これまで、現場で人を育てることを継続してきました。そして最近は、リタイアした後もコーチングを、地域や子育ての現場といったさまざまな場面で活用していきたいと考えています。

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