時間と経験を積み重ねて輝いている2人が受賞

 本アワードの選考委員の紹介に続き、記念すべき第7回目の受賞者が発表された。

 ビジネス部門を受賞したのは映画監督の河瀨直美さん。奈良を拠点に全世界を表現の場として作家活動をしており、東京オリンピック公式映画監督、2025年大阪関西万博のプロデューサーとシニアアドバイザーも務めている。カンヌ映画祭を始め各国の映画祭で多数の受賞を重ね、最新作『朝が来る』では米アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表に選出され、日本アカデミー賞でも7部門で優秀賞を受賞。リアリティを追求する作品づくりは国内外で高い評価を受けているほか、エグゼクティブディレクターを務める『なら国際映画祭』では後進の育成に力を注いでいる。

 スペシャリスト部門は女優の仲間由紀恵さんが受賞した。数多くのヒットドラマや映画に出演し、20年以上もトップ女優として活躍。最近では人気海外ドラマのリメイクとして話題となった『24JAPAN』での日本初の女性総理大臣候補役でも注目を集めた。様々な役に挑んで演技の幅を広げていることに加え、NHK紅白歌合戦の司会を4回、日本レコード大賞の司会を2回務める国民的女優だ。年内も主演を含めドラマ出演が複数控えており、今後もさらなる活躍が期待されている。

 河瀬さんは「今、副賞としていただいたグランドセイコーは、1967年生まれのものを現代のフォルムにアップデートしたものだと聞いた。私が生まれたのはその2年後で、日本が高度経済成長にさしかかり、日本が世界に向けて開いていく時代だったとあらためて思う。私自身が2020東京五輪の公式映画監督となったが、今、パンデミック下で全世界が時代の転換期を迎えている。その中でも世界中の皆さんがジェンダー平等を目標に掲げており、日本はまだ立ち遅れている。女性が女性らしく輝き世界を次の段階に導いていくべく、活動していきたい」と笑顔で語った。

 仲間さんは「15歳で上京し、20代30代のころは独身で寝る間も惜しんで仕事してきた。最近は幼い子供を見ながら仕事との両立に挑戦中。スタッフの協力のもとで、何とか家のことと仕事を両立しているが、周りの方の協力なしにはとても両立できないと痛感している。特に今はコロナ禍で限られた時間の中での仕事となり、あらためて周りへの感謝を再認識している。今回の受賞を一層の励みにして、これからも自分らしく頑張っていきたい」と語った。

 最後に、選考委員を務めた松永真理さんからのコメントが紹介された。「受賞した2人の共通点は、原点となる根っこを持っていること。河瀨さんは奄美大島、仲間さんは沖縄にルーツを持ち、10代から今日まで作品を作り、演じてきた。私たちはそこに、丁寧に折りたたまれた『時間の層』を見ることができる。気の遠くなるような思いと時間を注がれてきたと思う。その『揺るぎない原点』と『積み重ねられた時間』が2人の存在感の大きさに繋がっていることを、コロナで改めて教えてもらった。2人の受賞は後進にとって最高の励みとなるはず!」と力強い言葉で受賞者をたたえた。

取材・文/加納美紀