「ARIA世代ど真ん中」のコラムニスト河崎環さんが、なかなか口に出して聞けない、相談できない「ARIA世代のオトナ臭」問題について、鋭く考察する。たどり着いたロジカルでスマートなARIA世代のためのニオイケアとは?

40代、想像以上にいろいろ出てくる

 40代に入ってから、まるで自分に言い聞かせるかのようにずっと繰り返す言葉がある。

 「そんなはずはない」。

 「40を過ぎるとね、まるで坂道を転げ落ちるかのように加齢が進むのよ」、先輩女性たちの言っていたことは本当だったのだ。

 それまで感じたことのなかった、抗えぬ重力の存在をまざまざと思い知らされる。前年まで騙し騙し自分を押し込んでいたデニムが、ある年とうとう入らなくなる。街のショウウィンドウに映ったどこかのおばさんが自分だと気づいてギョッとする。地下鉄の窓に映る、疲れ切った自分の顔がわりとホラー。

 DVDを鑑賞しても涙が目じゃなくて鼻の穴から流れ出て、どうも泣く姿に趣がない。走って満員電車に飛び乗ったら、汗が止まらなすぎて自分さえ引くレベル。どんなに潤いを与えても秒で乾く肌。顔を洗って、見上げた鏡に映っているのは実家の母かと悲鳴を上げた朝。「痩せた?」いえ、やつれたんです。「目が大きくなった?」いえ、落ち窪んだんです……。

 自分の首筋に細かな縦ジワが何本も走っているのを見つけた時は、さすがに「熟女の鶏ガラとは言い得て妙だわ?」と感心することしきりだったが、いや感心してる場合じゃない。

 そんなはずはない……と思いたい。

認めよう、他の誰でもない、自分がニオうのだ・・・

 外見の異変に加えて、目に見えぬ異変も次々と起き始めた。あれ、なんかニオう。ツンと酸っぱいような、どこか懐しい醤油のような、発酵したようなニオイ。秋冬に3、4日ちょっとうっかり着続けてしまったパジャマから醤油のニオイがしたとき、「これは自分からは嗅いだことのない体臭だわ……」と愕然とした。女子から香るのは花の香りと相場が決まっているだろうに、なぜ私から香るのは醤油なのか。切ない。思わずそうツイートしたら「いいね」がめっちゃついて複雑。親切な友達からは「美味しそう」とのリプライまで来て、いや全然そんないいものじゃないから……。

 医者に運動しましょうと言われてジム通いを始めたけれど、滝汗が絞れるウェアを持ち帰った夜は間違いなくバッグを開けた途端、ツーン。慌てて洗濯機へ放り込む。そして身も凍るような、今季一番の怪談をお聞かせしたい。不本意ながら夫と私でお揃いの枕カバー、どっちがどっちのかは洗濯乾燥後に残り香で確認してから枕にかける習慣なのだけれど、実は年々区別がつかなくなっている……。そう、他の誰でもない、自分がニオうのですよ……。

 さあ認めよう、職場や子供の保護者会や女性車両で、香水とは違うオトナの匂いがするのにあなたも気づいているはず。私だって、「私たち」だって、オトナ臭を醸してしまっているのだ!