自分の時間を楽しむ余裕が出てきたARIA世代の女性たちに大人の趣味としておすすめしたいのが、クラシック音楽を楽しむこと。指揮者として世界で活躍する井上道義さん。クラシック音楽への造詣が深く、日本を代表するオーケストラ・NHK交響楽団の今回の公演の協賛企業である明電舎 取締役社長の三井田健さん。クラシック音楽を愛するお2人にその魅力と楽しみ方を教えていただいた。

左から、指揮者として世界で活躍する井上道義さん、株式会社明電舎 取締役社長の三井田健さん
左から、指揮者として世界で活躍する井上道義さん、株式会社明電舎 取締役社長の三井田健さん

忙しく働く女性こそ、趣味の時間を持つべき

三井田さん(以下、三井田) 私はクラシック音楽を楽しむことが趣味なのですが、クラシックに限らず、音楽を聴くことは忙しく働く女性にとって、ストレス解消やリラックスといった意味で非常にいいと思います。音楽を聴くと川のせせらぎや焚き火の動きなどと同じ不規則な動きである「ゆらぎ」が感じられます。クラシックはその「ゆらぎ」が非常にいいリズムで体に入ってくるように感じます。

井上さん(以下、井上) 三井田さんのおっしゃる通りで、クラシックはテンポが速くなり、遅くなり、音が大きくなり、小さくなりという、とても不安定な音楽。それはまさしく「ゆらぎ」です。そして、その不安定さが最後には解決されるのが大きな特徴だといえます。

三井田 クラシックは「他の音楽に比べて敷居が高い」「勉強してからでないと行けない」とコンサートに行くことを躊躇している方も多いかもしれませんが、私はあまり先入観を持って聴くとよくないかなと、始まる前にはプログラムもあまり読まないようにしています。どうしても、評論家など文章を書いた人の主観も入っていますからね。

井上 ええ、自分の感性で聴くのが一番です。どう感じたって誰も文句はいわないですから。もし、クラシックのコンサートに行って「つまらない」と感じたら、それは演奏が悪かったということ。私たち演奏者の問題です。その人が勉強しなかったからでもないし、感性が低いわけでもありません。私も「つまらないなぁ」と途中で帰ったことが何度もあります。知識がなくても、演奏がよかったら、必ず「おもしろい!」と感じてもらえるはずです。

音楽に没入する感覚を味わってもらいたい

<b>三井田健(みいだ・たけし)さん</b><br>1978年慶大商学部卒、明電舎入社。2012年に取締役、2015年に副社長を経て、2018年に社長就任。明電舎は1897年12月22日に重宗芳水(しげむね・ほうすい)氏が創業し、「モートル(モータ)の明電」として国産モータの製造を手掛け、電気の技術で日本の発展に貢献してきた。2017年に創業120周年を迎え、記念事業としてN響コンサートへの協賛をスタート
三井田健(みいだ・たけし)さん
1978年慶大商学部卒、明電舎入社。2012年に取締役、2015年に副社長を経て、2018年に社長就任。明電舎は1897年12月22日に重宗芳水(しげむね・ほうすい)氏が創業し、「モートル(モータ)の明電」として国産モータの製造を手掛け、電気の技術で日本の発展に貢献してきた。2017年に創業120周年を迎え、記念事業としてN響コンサートへの協賛をスタート

三井田 プロ・オーケストラとして日本でもっとも長い歴史を持つNHK交響楽団は、以前は、日本中の4番バッターの演奏者ばかりが集まっているようなイメージでした。でも、最近は若い人や女性も増えて、ずいぶん雰囲気が変わり、また新しい魅力が加わったように思います。

井上 男性ばかりの集団だったところに、女性のやわらかさが加わることでたしかに変わりました。それは、非常に素晴らしいことだと思っています。でも、やわらかいけれど、実際は女性のほうが強いですね。しなやかさがあるから、どんなに曲がっても折れない。男は曲がったら折れちゃいますからね(笑)。

三井田 そうかもしれませんね。オーケストラは会社組織に当てはめることもできます。海外のことわざで「オーボエの2番」というと、「地味な感じの人」の例えとして使われることがあると聞きます。でも、2番奏者は花形の1番奏者の陰で出しゃばらず、でも適度な存在感を持ちながら支える大事な役割を担っています。そういう、目立たないけれど重要な仕事をしている人たちに目を向けながら見るのもおもしろいと思います。それは家でCDを聴くだけではなかなかわからないので、会場に足を運んでいただくのが一番。CDは繰り返し聞いても同じ音ですが、コンサートでその日の演奏は一生に一度だけ。そういう瞬間を味わうことで、人生が豊かになるのではないかと思います。

井上 コンサートはまわりに人がたくさんいるけれど、音楽に没入することでそれを忘れられる場所でもあります。そういう感覚を味わってもらいたいと思いながら、いつも舞台に立っています。