いろいろな人材が昇進するのが本当のダイバーシティー

田代 同じ成果を4時間で出す人より2時間で出す人のほうが優れている、という評価ができる仕組みが整えば、「19時前退社」を取っ払っても、優秀な女性が活躍しやすい環境になると思います。

白河 9名もの女性が経営に関わるようになった時点で、かなり仕組みづくりは進んでいくのではと期待しています。田代さんが「会社の本気度を感じた」と言った12年ほど前からの蓄積が、ここにきて実を結んでいるのではないでしょうか。

田代 そのように評価していただけるのはありがたいのですが、正直、私はまだ満足していません。なぜなら、今回、役員に昇進した女性たちのほとんどは「男性並みに働いてきた女性」ばかりなんですよ。これからもっと、子育てを経験したり、いろんな理由で休職を経て復帰したりと、いろんなパターンの人材が混ざってきて初めて本当のダイバーシティーだと思います。とはいえ、同じ能力でも女性というだけでチャンスが与えられなかった時代と比べれば進歩ではありますね。

白河 女性も男性も、もっと多様な人材が経営に関わるべきだということですね。

男性の「キャリア、結婚、子育て」総取りは欲張り?

田代 はい。女性はよく「キャリアも結婚も子育ても、手に入れるのは欲張りではないのか」と問われたりしますが、男性も同じ問いがかけられる社会こそフェア。男性もキャリアだけではなく、子育てもしたいなどと欲張りになれれば、世の中は変わっていきます。

白河 今年は企業の男性育休必須化の推進もトレンドとしてありますが、まだまだ全体の取得率は5%程度。「男性の働き方改革」こそが本丸だと。

田代 そこが進めば一気にすべてが解決するでしょうね。今は、男性が「人生のすべてを求められない」のが現実ですし、それに対する疑問さえほとんど聞こえてきませんから。

白河 私が注目しているのは、今回の女性取締役ラッシュが金融業界から発生しているという点なんです。SDGsしかり社会貢献的な投資が増えたりと、世界のお金の流れが変わりつつある中で、その流れに最も敏感な業界がいち早くかじを切っているのではないかと。

田代 大きな流れでいうと、アジア危機やリーマンショックを経験しながら、証券会社もよりコンプライアンスや公共性を重視する姿勢が求められるようになってきました。また、今の若い世代にも「社会的に意義のある仕事がしたい」という人が増えています。

 ここ最近の女性役員誕生の流れについては、私はちょっと冷めた目で「G20を意識してのアピールじゃない?」という見方もしていますが、アピール目的でもしないよりかはいいですね。G20後も流れを加速できるかで、本気度は測れるでしょう。