金融業界の女性取締役誕生ラッシュが話題です。「なかでも意義を感じたのが、大和証券グループの『本体』の副社長に生え抜きの田代桂子さんが就任したこと」と言うのは、少子化ジャーナリストで相模女子大客員教授の白河桃子さん。前編では均等法第一世代として田代さんがどのように道を切り開いてきたのかを聞き、後編ではグローバル視点で見た日本の女性活躍推進の課題を二人が語ります。

(上)「世の中はフェアじゃない」前提
(下) 金融で女性役員増のワケ ←今回はここ

白河桃子さん(以下、敬称略) 「女性だから」という理由で注目されることに、嫌気が差したことはなかったですか? 例えば、こういったインタビューでも、男性なら聞かれないことを聞かれたり。私もいつも「申し訳ないな」という気持ちで聞くのですが……。

田代桂子さん(以下、敬称略) それはどうしてもありますよね。初めて役員の職に就いた10年前、メンバーの中で私がダントツに若かったので、「女だから(特別扱いされたんだろう)」という声は聞こえてきました。社長からは内示を受けるときに「そういうふうに見られてしまうと思う。申し訳ない」と言われました。社長にそう言われてほっとしたのを覚えています。分かってくれているんだなと。

白河 前回のインタビュー冒頭で、最近の金融業界を中心とする女性取締役ラッシュは「企業が本気で成長しようとするならば当然の流れ」と話されました。田代さんは海外経験も長いですが、グローバルな環境でも同じように感じてきましたか。

田代 グローバルでは女性の役員登用は、日本以上に加速している流れだと感じます。ただし、国によってその進め方は違うものだし、そうあるべきだと思っています。例えば、今回の私の人事についても「生え抜き」であることが強調して報じられましたが、転職を繰り返してキャリアアップすることが当たり前の米国では、生え抜きであることはほとんど意味を持ちません。

活躍する女性の数が「継続的に」増えることが大切

白河 なるほど。ただ、流動性が高く転職が盛んな米国であっても、本当の意思決定層にはなかなか女性が入り込めないガラスの天井があるようです。米国の女性活躍を見て感じることはありましたか?

田代 本気度にはバラツキがあると感じていました。例えば、口ではいくら「ダイバーシティー」と言っていても、実際にやるとなると痛みも伴うし面倒臭くもある。現場任せだと進まないので、「女性を昇進させたマネジャーにはボーナス加点」というようなインセンティブを与えてようやく機能している会社も少なくないんです。

 となると、本気で組織の成長のために女性を引き上げているのか、単に自分のボーナスを上げるためのポイント稼ぎなのか。その違いは分かれるなと感じていました。

白河 本気度が最も表れるのはどんなところだと思いますか? 信頼できる指標とは?

右が大和証券副社長の田代桂子さん、左が少子化ジャーナリストの白河桃子さん
右が大和証券副社長の田代桂子さん、左が少子化ジャーナリストの白河桃子さん