田代 私自身は天性の楽天家かつ鈍感なタイプなので、あまり覚えていないんですよ(笑)。満員電車で押されても、「この人、きっと家で嫌なことあったんだね」と消化しちゃうタイプなので。仕事のモチベーションが下がるのも体調不良のときくらい。

 もちろん、自分の提案が通らないときは少し落ち込みますが、「この部分が足りなかったのね」と原因分析できれば消化できます。40歳を迎える前には、「結婚して子どもを産む人生を歩まなかったことに、私も落ち込んだりするかな」と思ったのですが、その時期もアッサリと過ぎ去ってしまいました。

 きっと、人と自分を比べない性格がプラスに働いているのかもしれないですね。副社長という立場のプレッシャーも、本人があまりよく分かっていないかもしれないです(笑)。

一つの会社で働き続ける醍醐味とは?

白河 なるほど。そのポジティブ思考が田代さんの最大の強みなのかもしれないですね。これだけの大企業の要職に就いた女性が、こんなに自然体であるというのが勇気づけられます。これから成し遂げたい目標は?

田代 世界に向けて、日本のプレゼンスを高める仕事をしていきたいですね。人生100年時代に対して真剣に備えているのは、世界の中でも日本人が先進事例。個人資産の備えという点で、高齢化・長寿化の社会で証券会社ができる役割は大きいと思います。

 私が仕事をしていて一番うれしいのは、チーム一丸となって取り組んできた案件が実を結んだ瞬間です。そして、最近感じるのは、一つの会社でずっと働くことの醍醐味。エレベーターの中で、ばったり20年前の懐かしい顔と出会ってお互いの仕事を報告し合えたり。そんな時間を共有できる仲間がたくさんいることが、私の宝です。

取材・文/宮本恵理子 写真/洞澤佐智子