田代 それに関しては正直、ピンとこないのですが、何をもって幸せと感じるかは人それぞれ。他人と比較してもしょうがないのかなと思います。昇進のボールが来たら素直に受けてみる。これくらいの気持ちで備えていいんじゃないでしょうか。男性だって、昇進せずに定年を迎える人はたくさんいるわけですから。

白河 いろんな人を包括してこその組織ですよね。

田代 「自分は部長にはなれない」と分かってきた人たちをいかに活性化していくか。これこそがマネジャーの仕事だと思います。これから仕事と介護の両立も大問題になっていきますし、モチベーションを保ちつつ長く働き続けるための知見の蓄積が、日本企業全体に求められています。

 女性も今は身近なモデルが少ないから昇進に対して足がすくむのかもしれませんが、これから事例がどんどん登場すれば、「私にもできそう」と思える人は増えていくはずです。

白河 例えば「同じ職場の2年上の先輩が昇進」のような身近な事例が出ると、心理的ハードルはかなり下がりますよね。田代さんは一つの企業で華麗に昇進されたモデルですが、キャリアを考える上でアドバイスがあればぜひ。

「『私は上まで行く』と覚悟を早めに持ちづらい日本の環境も、女性の昇進が促進されない理由でしょうか」
「『私は上まで行く』と覚悟を早めに持ちづらい日本の環境も、女性の昇進が促進されない理由でしょうか」

「世の中はフェアではない」前提で闘っていく

田代 自分自身の成長と自己実現を日々進歩させていく気持ちを持ってほしいと思います。そして、何事も「こうじゃなきゃいけない」と縛られないことが大切。キャリアには縦方向だけでなく横方向にも広がれる柔軟性がある。広がる方向は人それぞれ。「こうじゃなきゃ」という縛りを無くしたら、失敗と思うこともなくなりますよ。

白河 失敗と思った途端に、人はイキイキと働けなくなる。それは会社にとっても損失ですものね。

田代 それと、誤解を恐れずに言うと、世の中は「公正公平」なことばかりではありません。上野千鶴子さんの東大祝辞も話題になりましたが、私も賛同します。理不尽なことに対し、「フェアじゃない!」と叫んでも「そうだよ」で終わってしまうだけで、エネルギーの無駄遣い。フェアではない前提で、「だったらどう闘うか」を考えていくほうがいいと私は思います。

白河 田代さんの経験でも印象的な出来事が?