白河 信じて任せた部下が失敗してしまったら?

田代 それは任せた側の責任として受け止めます。必要ならば謝りにも行きますし。判断を求められたときにハッキリと決めることも、上に立つ者の役割だと思っています。

白河 海外市場を専門にするという方向性はいつごろから意識されたのでしょう?

「昇進は『台に上がる』ようなもの」に納得

田代 私自身は自分を超ジェネラリストだと思っています。留学からいったん帰国した後はロンドンでコーポレートファイナンスを担当した後、経営企画部、IR室へ。その後、インターネット証券に6年携わった後にニューヨークへ。ロンドンとニューヨークの間は国内に14年間いましたので、当社の中で比較しても、海外に長くいたほうではないんですね。

 その間、リーマンショックも、さらに遡ってアジア危機も経験し、証券業界のダイナミックな波にもさらされました。「辞めたい」と頭をかすめたのは一度だけ。ロンドン赴任中にアジア危機で市場が急激に収縮し、仕事を前向きに楽しめなくなった時期には考えました。それも、日本に戻してもらったことですぐに解消されました。

白河 ARIA世代の女性たちからは「昇進を打診されても、尻込みしてしまう」という声もあります。かけたい言葉はありますか。

田代 ある女性の先輩から言われて納得したのですが、昇進は「台に上がる」ようなものだと。台に上がるまでは爪先立ちしてやっと見えていた景色が、台に上がれば自然体のまま見えるようになる。つまり、台に上がればラクになる。

白河 今がつらいと思っていても、昇進はそのつらさの解消につながるよ、というメッセージですね。

「私はずっとここでいい」は、組織ではあり得ない

田代 キレイな説明をすればそうです。もっとリアルに答えるとしたら、「隣に座っている自分より優れた点がない男性があなたの上司になってもいいの?」ということ。それに、組織の活性化の点からいっても、優秀な女性が同じ場所に留まるのは非生産的です。自分のためにも、組織のためにも、一歩を踏み出したほうがいいんじゃないかな。「私はずっとここでいいわ」は、組織ではあり得ません。

白河 日本企業は、育成期間が長いのもネックかもしれません。「自分がこれ以上、上にはいけない」という見込みが立つのが遅い。外資系企業では比較的数年で上に行けるかどうかの見込みが立つので、人材の流動性も高まるらしいのですが。日本企業では「私は上まで行く」と覚悟を早めに持ちづらい環境も、女性の昇進が促進されない理由でしょうか。