自分軸を探し始めたARIA世代。何か、自分自身を高められる学びはないかと探している人も多いのではないでしょうか。そんなARIA世代の女性たちに、大人の習い事として注目されているのが「漢方」。その理由を薬日本堂漢方スクールの専任講師、劉梅さんに伺いました。

ARIA世代が「漢方」を学ぶ意味とは?

<b>劉梅(りゅう・めい)さん</b><br>薬日本堂漢方スクール専任講師。黒龍江中医薬大学卒業後、内科医として臨床を経験。北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。薬局勤務の傍ら漢方相談員の指導・育成に参加、TV・雑誌でも活躍。著書に『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』(地球丸)、『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』(講談社)など
劉梅(りゅう・めい)さん
薬日本堂漢方スクール専任講師。黒龍江中医薬大学卒業後、内科医として臨床を経験。北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。薬局勤務の傍ら漢方相談員の指導・育成に参加、TV・雑誌でも活躍。著書に『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』(地球丸)、『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』(講談社)など

 1969年の創業以来、東洋の健康思想をもとにライフスタイルの提案を行っている薬日本堂。2004年に品川のニホンドウ漢方ミュージアム内に開校された薬日本堂漢方スクールは現在、品川、大阪、仙台の3校。一般的に難しいと思われる漢方理論を、初心者にもわかりやすく体系化し、初級、中級、上級、薬膳、臨床などレベルに合わせたコースを用意。他にも、季節の薬膳レシピや心を落ち着かせる和の香りなど、1つのテーマを手軽に学ぶ1回完結のワンデイセミナーも健康や美容に興味を持つ女性たちに人気だ。

 「生徒さんは女性がほとんどで、なかでも40代、50代の女性が受講者の60%くらいを占めています。仕事につなげるためというよりも、家族の健康、自分の健康に役立てたいという理由の方が多いです。その背景には、家族が病気になったり、親が亡くなったりなど、若い時にはなかった出来事に直面して、健康について考えさせられるようになるといった、この年代ならではの背景があるのではないかと思います。ですから皆さん、とても真剣な眼差しで授業を聞いてくださいます」と劉梅さん。

 そして、漢方を学ぶことで女性たちは明らかに変化していくという。
 「3カ月のコースだと、最初と最後では皆さん顔色も変わって見えます。『家族がちょっと体調を崩したときに、教わったお粥を作ってあげました!』など、実生活に漢方の知恵を生かしてくれている様子を報告してもらえるんですよ」と劉梅さんはうれしそうに語ってくれた。

薬日本堂の漢方ギャラリー
薬日本堂の漢方ギャラリー

「養生」の基本となる「心・食・動・休・環」とは?

 「漢方」というとどうしても漢方薬のイメージが強くなりがちだが、それだけではなく、鍼灸、気功、ツボ、薬膳、呼吸法といったことまでを含み、暮らしに溶け込んだ健康維持のための知恵の集合体のことを指す。自然のものを活用して、自然治癒力を高めようとする知恵が「漢方」には宿っており、中国伝来の自然哲学が日本の風土や日本人の体質、考え方などに合わせて変化し、日本独自の伝統医学として根付いたもの。そんな「漢方」で、何より大事とされるのが「養生」だ。

 「『一に養生、二に薬』といい、まず養生を実践することが大切と考えます。養生とは健康でいるために日々どう生活するかということ。自分自身に向き合い、もともと持っている生命力を高めていく暮らし方です。養生のポイントとされるのは『心・食・動・休・環』。『心のあり方』『食事のとり方』『体の動かし方』『休養のとり方』『生活環境の整え方』という、自分自身を取り巻くこの5つの要素のどれか一つでも欠けていると、体のバランスが崩れ、病気につながると考えられています」(劉梅さん)

 なかでも、体をつくるもとになる「食」の養生は非常に重要だという。
 「私たちの体は、食べたもので作られます。つまり、すべての食材には働きがあり、食養生するということは病気になる前の先手の対策。私が生徒さんによくいっているのは『自分の健康は自分で守る』ということ。それは決して難しいことではありません。寝ること。食べること。毎日の習慣の中で、できることから始めればいいのです」と劉梅さんが話すように、年齢を重ねたいま、これからの人生を自分らしくイキイキと過ごすスタートとして、「漢方」の考え方を学んでみるのもいいのかもしれない。