得意なことをする時間が3時間未満だと過半数の人はストレスを抱く

 もうひとり、コロナ下で転職活動をした女性の声も紹介しましょう。

 「ずっと前から決めていた転職を実行に移そうというタイミングでコロナ禍に襲われたので、予想以上に転職活動は難航し、長期化しました。『もし、この先どの会社からも必要とされなかったら、どうしよう』と不安になることもありました。負のスパイラルに陥ると、自分が何をしたいのかさえ、分からなくなってしまいます。

 しかし、『何事にも芯を通す』という自分の強み(達成欲×内省×責任感)を思い出し、何をしたいのかがはっきりすると、緊張感が和らぎ、たとえ不採用でも過度に落ち込まなくなりました。特に、明確になった私自身のミッションに関わる職種や企業に絞って応募するようにしたことで転職への意欲が増し、より活動的になったと思います。それが好影響を及ぼしたのでしょう。新たな勤務先でスタートを切ることができました」

 彼女とのコーチング・セッションは驚きの連続でした。最初は消え入りそうだった声が、最後には自信にあふれたものとなり、まるで別人でした。自分の強みが腑(ふ)に落ちたことで本来の自分を取り戻せたのでしょう。「悪いのは、今の経済状況であって、私ではない。私にしかできないことを必要としている人は必ずいる」と状況を客観視して、自分の気持ちを立て直すことができたのです。

 ギャラップ社の調査によれば、自分の得意なことをする時間が1日3時間に満たないと、52%の人がストレスを感じ、50%近くの人が不安を抱くことが分かっています(*注3)。反対に、自分の強みを使う時間が増えれば増えるほど、ポジティブな感情が高まります。

 本当の自分を知りたい、自分の強みが何か知りたいときには、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』で紹介されている「資質(才能)」が参考になります。

 まずは、自分のダメなところではなく、よいところに目を向けましょう。そうすれば、世界の見え方が大きく変わります。先の読めない時代だからこそ、強みに焦点を当てることを大切にしてほしいと思います。

文/古屋博子

自分の強みを見つけられる本
『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』 (日本経済新聞出版/1800円、税抜)
トム・ラス著、古屋博子訳。「人のよいところ」や「優れた点」を34種類の資質(才能)として抽出、紹介。人によって異なる、これらの資質こそ、その人を際立たせる特長であり、最高の力を発揮するための「武器」となる。隠れた才能を開花させるための戦略やアイデア、ヒントが満載。

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関連サイト *注1 「Employees Who Use Their Strengths Outperform Those Who Don't」
*注2 「Global Study: ROI for Strengths-Based Development」
*注3 「How Employees' Strengths Make Your Company Stronger」