自分の強みを使っている人は仕事への熱意が6倍高い

 コロナ下で人事制度改革に着手した大手企業の執行役員の方は、こう述べています。

 「この役職に就いたとき、任務の困難さから1年後にはお役御免になるかもしれないと思いました。家具を購入するのをやめて、レンタルにしようかと悩んだほどです。しかし、『言行一致の人でありたい』という自分の強み(信念)が分かると、『この改革は絶対に形だけで終わらせたくない』という自分の本心に気づき、それが大きな力となりました。だからこそ、コロナ禍に直面しても『今こそ改革をやり遂げるチャンスだ』と思えたのでしょう。自分の強みが分かったことで、覚悟を決めて事に当たれるようになったと思います」

 自分の強みを理解し、それを受容する。自分が自分であることを受け入れる瞬間というのは非常に尊いものです。強みが分かると、自分の内側から力が湧き出てくるのを感じます。そして、ここが大事なのですが、その強みを使って目の前の現実にどう対処するかが見えてくるのです。そうすると、何度でも困難に立ち向かえるようになります。

 調査コンサルティング会社で「クリフトン・ストレングス」を開発した米ギャラップ社によると、自分の強みを毎日使っている人は、そうでない人よりも仕事に対する熱意が6倍、生活の質が3倍高い傾向にあることが明らかになっています(*注1)。

イライラや不安、プレッシャーから解放される秘訣

 「強みに焦点を当てるアプローチ」を導入したことで、コロナ禍でも前年を大きく上回る増収となった歯科医院もあります。同医院の院長はこう述べています。

 「歯科疾患の多くは日々の生活習慣から生まれます。だからこそ、患者さん一人ひとりに合った予防について考えていきたい。そう考える自分の強み(個別化×共感性)が分かり、方向性が明確になったからでしょうか、以前よりも私が怒らなくなったので、皆助かっているそうです。いつも以上にピリピリしていてもおかしくないこのコロナ下で、すごいことではないですか。また、お互いに相手の強みに興味を持つことの大切さを職場の皆と共有できたことも、大きな力になりました。スタッフの一人が戦線離脱し、人数的に全く余裕がない中でも、皆でリカバーすることができました」

 自分の強みが分かり、自分らしさに自信が持てると、他人の強みも認められるようになります。すると、イライラや不安、プレッシャーから解放される。そうなれば、おのずと職場の生産性も高まります。

 ギャラップ社が世界45カ国、4万9495の職場(ビジネスチーム)で働く120万人の従業員を対象に調査をしたところ、強みに焦点を当てるアプローチを導入した場合には、売り上げや収益、顧客エンゲージメント、離職率、従業員エンゲージメント、安全性といったすべての項目でプラスの効果がありました(*注2)。