宴は、懐石に使われる八寸に盛り込んだ4人の前菜からスタート。馬渡シェフの「玉ねぎの詰め物 イタリアチーズのソース」は、秋田とイメージが近い北イタリアの郷土料理をアレンジしたもので、小坂町の桃豚を使用した。後藤シェフの「比内地鶏と枝豆のタルトレット」は、大館名産の枝豆パウダーを練りこんだサブレに、比内地鶏と枝豆、ばっけ味噌(ふき味噌)を洋風にアレンジしたタルトレットを載せたもの。「私の店はフレンチレストランですが、食材は国産が9割です。これまでも様々な食材を使ってきたつもりですが、それでも秋北エリアを訪れて知らない食材があることに驚きました。まだまだ発見がありそう」と後藤シェフは目を輝かせていた。

 荒木シェフの「桃豚のパテ・ド・カンパーニュ 黒ニンニクとこはぜのペースト」には、比内地鶏のレバー、小坂町の桃豚、北秋田市の黒ニンニク、上小阿仁村のこはぜ(ブルーベリーの一種)と地元の食材がふんだんに使われていた。梨澤シェフの「ハタハタ燻りがっこ小袖すし 長芋梅酢漬 枝豆豆腐」では、透けるほど薄くスライスしたいぶりがっこをハタハタとすし飯で挟むなど、繊細な懐石料理の技が息づいていた。

 続いて提供されたのは、馬渡シェフのパスタ「枝豆と比内地鶏もも肉のトロフィエ」。馬渡シェフは、秋北エリアの食材の中でも「枝豆は風味が特に素晴らしい」と絶賛。枝豆パウダーをたっぷり入れたパスタは、枝豆の香りと味がふんわりと感じられ、比内地鶏とも好相性だ。

枝豆パウダーを練りこんだトロフィエというパスタの上にはフレッシュなとんぶりがあしらわれた
枝豆パウダーを練りこんだトロフィエというパスタの上にはフレッシュなとんぶりがあしらわれた

 梨澤シェフによる蒸し物「枝豆饅頭、新筍、人参」は、同じく枝豆パウダーをジャガイモと練りこんで皮にし、桃豚のバラ肉、栗の渋皮煮、しめじを餡にした贅沢なもの。「大館の比内地鶏と枝豆、そしてじゅんさいは天下一品。レシピのアイデアが広がります」と梨澤シェフは秋北エリアの食材が持つ可能性の高さを語っていた。

 続く魚料理は、荒木シェフの「ヒメマスのムニエル ちょろぎの焦がしバターソース」。十和田湖のヒメマスは上品な味わいが特徴で、秋田の伝統野菜ちょろぎの漬物を入れて、バターソースにほどよい酸味がアクセントを利かしていた。荒木シェフは「秋北エリアの食材のおいしさに既成概念を覆されました。この地の良いものを使って、僕の考える秋田の料理を食べていただきたい」と情熱的に語っていた。

 メインは後藤シェフによる「牛フィレ肉のポシェ 香る比内地鶏のコンソメと共に」。A5ランクの秋田牛を沸騰しないほどの温度で茹で、色とりどりの野菜を可憐に盛りつけた一皿。これに比内地鶏で取った濃厚なコンソメスープを食べる直前にかけて完成させるという斬新な発想に、客席の誰もが唸っていた。比内地鶏の濃い味わい、ポテンシャルの高さに驚嘆してこのレシピを考案したと話す後藤シェフ。「一般的な鶏でとったスープでは牛肉に太刀打ちできないのですが、比内地鶏のスープは牛に合わせても負けない」とインタビューに答えていた。

 最後を飾ったのは、荒木シェフによるデザート「木苺のホワイトチョコレートフォンダンと枝豆ショコラ」だ。大館市の木苺とホワイトチョコレートを混ぜ合わせて焼いたもの。枝豆を乾燥させて砂糖とチョコレートでコーティングし、枝豆パウダーをまぶした枝豆ショコラは荒木シェフのオリジナルで、そのアイデアとおいしさにほかのシェフたちも賞賛していた。