秋田県北部(秋北エリア)と聞いて、秋田犬や十和田湖の自然を思い浮かべる人は多いだろう。しかしこの地は、日本三大美味鶏の一つである比内地鶏をはじめ、秋田牛、桃豚、枝豆、とんぶり、じゅんさいなど、多彩な食材の宝庫でもある。2019年2月、その食材に魅了された東京の一流シェフたちが大館市の宿「日景温泉」に集結。 DMO(観光地経営組織)である秋田犬ツーリズムの呼びかけで、「地元食材×4人のシェフ シェフたちの響宴」が開催された。東京のシェフたちの技で、地元の食材が想像をはるかに超えておいしく生まれ変わった。

秋北エリアは多彩で珍しい食材の宝庫

 きっかけは2018年9月、シェフたちが新たな食材を求めて、秋田県北部に位置する大館市、北秋田市、小坂町、上小阿仁村の4つの市町村(秋北エリア)を訪れたことに始まる。実は秋北エリアは多彩で珍しい食材の宝庫。比内地鶏に秋田牛、桃豚、枝豆、十和田湖ヒメマス、アユ、枝豆、とんぶり、じゅんさい、ネマガリダケやミズなどの山菜、サワモダシやナメコといったキノコなど多彩だ。

 「知らない食材がたくさんあり、さらに広がりを感じる」「同じ鶏肉や野菜、山菜でもパワーが違う」。そう感じた4人のシェフたちが真冬の秋田に参集。2019年2月21日、DMOである秋田犬ツーリズム(秋田県大館市)主催による食のイベント「地元食材×4人のシェフ シェフたちの響宴」が開催された。DMOとは、地域の観光資源に精通し、官民などの幅広い連携によってお地域の観光化を推進する法人組織のことだ。

 今回集まったのは、ミシュラン1つ星を7年連続で維持するフレンチ「アムール」のシェフ後藤祐輔氏、日本料理店の老舗として知られる「いらか」顧問の梨澤六郎氏、イタリア・ピエモンテ州のミシュラン店で修行をした「リストランテ ラチャウ」オーナーシェフの馬渡剛氏、世界各地を旅して腕を磨いたフレンチ「キエチュード」オーナーシェフ荒木栄朗氏の4人。いずれも東京で活躍するそうそうたる顔ぶれだ。

 イベントの会場となった「日景温泉」は、秋北エリアらしい風情のある森の一軒宿。1893(明治26)年の開湯以来、「美肌を保つ」と、地域の人々に愛されている源泉掛け流しの温泉も有名だ。イベントの当日は、玄関先では大館曲げわっぱ太鼓忍組による躍動感のあふれる太鼓の演奏と、愛くるしい姿の秋田犬がお客様をお出迎え。宴を楽しみに集まった地元の人々に加えて、東京からは報道関係者や日本駐在の外国人記者など、あわせて50人ほどが集まった。

惚れ込んだ地元食材に、一流シェフたちが技を注入

 今回のメニューは4人のシェフがそれぞれの技を集結させた料理のフルコース。前菜に始まり、パスタ、蒸し物、魚料理、肉料理、デザートまでの盛りだくさんな内容だ。その多彩な料理をさらに引き立てたのは、地元である小坂町にある「小坂七滝ワイナリー」にて地元産の山ぶどうを交配させた珍しい品種で醸された7種類のワイン。さらに、地元を代表する酒蔵「北鹿」の日本酒も振る舞われた。

宴のスタートにふさわしい華やかな前菜。右上から時計回りに、馬渡シェフの「玉ねぎの詰め物 イタリアチーズのソース」、後藤シェフの「比内地鶏と枝豆のタルトレット」、荒木シェフの「桃豚のパテ・ド・カンパーニュ 黒ニンニクとこはぜのペースト」。左上から中央にかけては、梨澤シェフの「ハタハタ燻りがっこ小袖すし 長芋梅酢漬 枝豆豆腐」が盛り付けられた
宴のスタートにふさわしい華やかな前菜。右上から時計回りに、馬渡シェフの「玉ねぎの詰め物 イタリアチーズのソース」、後藤シェフの「比内地鶏と枝豆のタルトレット」、荒木シェフの「桃豚のパテ・ド・カンパーニュ 黒ニンニクとこはぜのペースト」。左上から中央にかけては、梨澤シェフの「ハタハタ燻りがっこ小袖すし 長芋梅酢漬 枝豆豆腐」が盛り付けられた