いつも素のままでいることを心がけている

――美宝さんと和田さんは起業や副業で「自分らしく働く」ことを実現していますが、下村さんは企業の中で自分らしく働くために、どんなことを心がけていますか?

下村 いつも素のままでいることですね。神戸出身なので、今もずっと関西弁なんです。チームの子にびっくりされることもありますが、ベストなパフォーマンスを出すには、ありのままでいることが大事だと思いますね。

和田 それ、分かります! 私も関西出身で子ども代は関西弁を使っていたから、心の底から感情を出そうとすると関西弁になることが多いんです。自分らしさを出すために、私も関西弁に切り替えようかなと思い始めていたところなんですよ。

下村 では、次回はぜひ関西弁トークしましょう(笑)! それと、広報という仕事柄もありますが、和田さんや美宝さんのように、私たちのプラットホームのおかげで誰かとつながったりビジネスが大きくなったと聞くのは嬉しいですね。仕事と割り切るのではなく、仕事と自分のパッションポイントをつなげていくことも大事なことだと思います。

失敗への恐怖を乗り越えてチャレンジしてみる

――その中でキャリアを磨き、ステップアップしていくにはどうしたらいいのでしょうか。

下村 自分が「好きだ」と思う事をやることでしょうか。ライフステージがあがると、子育てや介護など仕事よりも大切なものが出てきます。そのときに、「仕事もやりたい」と思えるためには、好きなことをやる、それができる環境を作っていくといいですね。

――下村さんは執行役員として活躍されていますが、社内で心がけていらっしゃることってありますか?

下村 チームでは2週間くらいの仕事を洗い出して、優先順位を徹底させます。一方で、外からの問い合わせや依頼には絶対ノーと言わないようにして、可能性の芽を拾って育てていくようにしています。

和田 私は今、会社のトップとして意思決定を早くしつつ、リーダーシップを持って組織を引っ張っていく「リーダー像の構築」で試行錯誤しています。でも、リーダーシップのあり方を本で読んでも自分と合っていなければ説得力はないから、自分のキャラクターに合った自分なりのリーダーシップを見つけたいですね。

美宝 私は会社員時代も今も、無理かなと思うようなことでも、常にチャレンジを心がけています。ダメだったらそれも学びにもなりますから。働く女性の60%は「自分に自信がない」と答えるそうですが、自己肯定感を上げて失敗を恐れずに挑戦してほしい。そうすれば可能性が広がるし、自分で気づかなったスキルが見つかることもありますから。

下村 女性は昇進や転職の提案があったときに、自分が100%到達していないとアプライしないんですって。男性は「6割くらいいける」と思ったらアプライするようなので、女性は自己肯定感が低いようです。「自分を過小評価しているかも」という無意識のバイアスに自分で気づく必要があるんです。上手くいくことがデフォルトになっていると失敗するのが怖いかもしれませんが、それを乗り越えてチャレンジしてみることは大事ですね。私もお2人と話していて、「次は何にチャレンジしようかな」と、今考えています(笑)。

和田 私は起業するまでは自分はリスクテイカ―だと思っていたんです。でも、さすがの”起業業界”には「こんなにリスクがあるんだよ」と笑って話す人がいっぱいで、私ってその中ではすごく保守的な人だったんだと気づきました。だから今、リスクテイクしている人を研究して、「これぐらいチャレンジしちゃっていいものなんだ」と参考にしています。特に男性がカジュアルにリスクをとっている感じには注目しています。

リスクの大きさを見極めてできる範囲でチャレンジする

――では最後に、ARIA読者にメッセージをお願いします。

和田 リスクを取る時は、リスクの大きさを見極めてできる範囲でチャレンジするのがお勧めです。失敗したらこの後の人生を歩めなくなるほどのリスクがあるのか、見過ごせるくらいのレベルなのか。パートナーがいるから金銭面は多少安心していられるとか、このくらい貯金があるから大丈夫だとか。それが分かれば、最初に思っていたより大きなリスクをとってチャレンジすることができます。

美宝 私は35歳でキャリアチェンジをしましたが、妻とか母とか女性いった属性に囚われず、「自分をどう生かすか」を考えられる時代になってきています。一つの働き方や生き方にこだわらず、やりたいことに挑戦したほうがいいでしょう。いきなり独立起業を目指すのではなく、パラレルキャリアで自分にあった働き方ややりたいこと模索し、彩り豊かな人生にしてほしいですね。

下村 ARIA世代は中間管理職などに就く方も多いでしょう。大変なこともある反面、裁量権が大きくなって自分で予算を動かせるようになります。周囲をインフルエンスして仕事をしていくためには、今やっていることだけでなく、好きなことをやる、チャレンジすることが大事ですよね。私はフェイスブックで1年間PRを担当してきたので、やってみたいことをどんどん提案しています。今、地方自治体と協業して地方のビジネスにフェイスブックやインスタグラムを利用してもらう仕組みを模索しています。自分がパッションを感じることに、裁量権や予算を使って取り組んでいきたいので、皆さんも一緒に頑張りましょう!

和田幸子タスカジ代表取締役
1975年生まれ。横浜国立大学卒業後、富士通に入社。エンジニアとしてERP製品の開発に携わり、2005年に企業派遣制度を利用しMBAを取得。2008年に第1子を出産し、自身の課題である共働き家庭における「新しいライフスタイル」の実現に必要な社会インフラをITで作るため、2013年11月に起業。家事代行のマッチングプラットホームの運営を行う『タスカジ』を立ち上げた。タスカジは家事を仕事にしたい人と、家事をお願いしたい人が出会い、取引できる場。1時間1500円というリーズナブルな料金の家事代行を実現した。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018「働き方改革サポート賞」受賞
美宝れいこエール代表取締役、パラレルキャリアコンサルタント
1979年生まれ。産能短期大学卒業後、近畿日本ツーリストなどを経てパラレルキャリアコンサルタントとして独立。2018年にエール株式会社を設立した。パラレルキャリアに特化した会社員専門起業スクール美宝塾を東京・名古屋で開校し、「パラレルキャリア」という新しい働き方=生き方を多くの女性に伝えるためパラレルキャリア推進委員会を発足。「働く女性のためのワンランク上の高機能×時短スキンケア」Aileを企画開発プロデュースしているほか、《美とキャリアの融合》をテーマにフリーマガジンの発行やメディア運営、など多種多様な事業を手掛けている。
下村祐貴子フェイスブック ジャパン 執行役員 広報統括
1980年生まれ。神戸大学卒業後P&Gに入社し、日本市場におけるヘアケアブランドのPRに従事。25歳で結婚、29歳で長男を出産し、30歳で夫とともにシンガポールに赴任。住み込みメイドを雇い、アジア本社に広報として復職。33歳で次男出産、35歳で帰国。36歳でフェイスブックに転職し、広報統括を担当。PR戦略、コーポレートコミュニケーションなどを統括する一方、 開放的でオープンな社風のもと自社サービスを駆使して家事や育児の調整を効率的に行い、ワークライフバランスを重視した働き方を取り入れている。

文/加納美紀、写真/木村輝