この記事は、『日経Gooday(グッデイ)』が2月4日に公開した記事を2月19日にアップデートしたものの転載です。情報は掲載時点のものです。

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2019年末に中国の武漢で発生し、既に日本を含む複数の国で患者が報告されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の今後については、現時点では予測がつきません。中国国内での患者数は7万人を超え、症状が見られない段階でも周囲に感染させる可能性も指摘されて、世界的に不安が高まっています。 日本でも患者の報告が増加していますが、マスクの品薄状態は依然として解消されていません。マスクが手に入らないことで、感染への不安は増幅されています。しかしこの状況でも、コロナウイルスがどのように人に感染するのか、その感染経路を知れば、予防できる可能性は大きく高まります。以下に新型コロナウイルス感染症の概要と、今すぐできる予防策をお知らせします。

感染拡大への不安から、店頭ではマスクが品薄状態に。(C)kritchanut-123RF
感染拡大への不安から、店頭ではマスクが品薄状態に。(C)kritchanut-123RF

【コロナウイルスとは】人に感染するものは6種類、うち2つがSARSとMERSのウイルス

 コロナウイルスは、発熱や風邪のような症状を引き起こすウイルスで、人に感染するものは6種類知られています。なかには、重症急性呼吸器症候群(SARS;2002年11月に最初の患者が報告され2003年7月に収束宣言)や中東呼吸器症候群(MERS;国際的な流行は2015年5月に始まり2015年12月に収束)といった、重症化を引き起こすウイルスもありますが、それ以外の4種は、一般的な風邪の10~15%を引き起こすに留まります。

【新型コロナウイルス感染症の特徴】感染力はインフルエンザ超え? 死亡は持病がある高齢者に多い

 新型コロナウイルスの世界的な感染者数(症状は見られないが、検査で感染陽性となった人を含む)と死亡者数は毎日更新されています。厚生労働省は、それらの数を特設サイト「新型コロナウイルス感染症について」の「発生状況について」で公表しています。

 現時点では、感染者1人が何人に感染を広げるのか、感染者のうちの何人が重症化し、何人が死亡するのか、は正確には分かっていません。が、感染力はインフルエンザと同等かやや高く、死亡は、深刻な持病がある高齢者に多く発生すると考えられています。感染拡大の勢いや感染者に占める死亡者の割合は、その国の生活習慣や、感染症対策のレベル、医療機関の対応能力などによって変化するため、中国の状況をそのまま日本に当てはめることはできないでしょう。さらに、ウイルスが変異して感染性や病原性が変化すれば、この病気が人々の健康に及ぼす影響も変化します。

 ウイルスの潜伏期間は2~14日程度とされ、平均5.2日と報告する論文(2020年1月29日付NEJM誌電子版)もあります。

 どのような人が重症化しているのかは、たとえばLancet誌電子版に2020年1月24日に報告された論文から推測することができます。

 この論文によると、新型コロナウイルス感染拡大の初期段階となる2020年1月2日までに武漢で入院した患者41人のうち、30人(73%)が男性で、年齢の中央値は49歳でした。入院前から計13人が慢性疾患を抱えていました(8人が糖尿病、6人が高血圧、6人が心血管疾患。複数疾患を患っていた患者が少なくなかった)。発症時の症状は、発熱が98%に、咳は76%に認められ、44%の患者は筋肉痛または疲労感を訴えました。そのほか、痰(28%)、頭痛(8%)、喀血(5%)、下痢(3%)を示す患者もいました。

 呼吸困難の有無が記録されていた患者40人のうち、22人(55%)に呼吸困難が認められ、41人全員が肺炎と診断されていました。13人(32%)は集中治療室(ICU)に入室し、6人(15%)が死亡しました。

 その後報告された、軽症例を含む1099人の患者の経過をまとめた論文では、受診時に重症と診断された患者は16%(173人)で、非重症の患者に比べて年齢が高く(中央値は重症例52歳、非重症例45歳)、高血圧(24%)、糖尿病(16%)、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など、6%)、COPD(慢性閉塞性肺疾患、4%)の持病が有意に多いという特徴がありました。1099人のうち82%が入院し、酸素投与が必要になった患者は全体の38%、気管内挿管による人工呼吸管理が行われた患者は2%で、死亡は15人でした(致命率1.4%)(関連記事「新型コロナの重症度、致死率はどれくらい? 最新報告から見えてきた現状」)。

【現時点の治療法】ワクチンや抗ウイルス薬はなく、基本的に対症療法のみ

 現時点では、新型コロナウイルス感染症に特化した治療法(治療用ワクチンや抗ウイルス薬など)はありません。症状に合わせて多様な治療が行われ、重症化すれば人工呼吸器も用いられます。

 重症の肺炎を起こした患者にHIV治療薬やインフルエンザ治療薬、あるいはエボラ出血熱の治験薬が有効だったとする報告も出ていますが、有効性や安全性などについては、今後慎重に検証する必要があります。