この記事は、『日経Gooday(グッデイ)』に2020年2月21日に掲載された記事の転載です。情報は掲載時点のものです。

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2020年の年明けから、新型コロナウイルスに関する報道が途切れることなく続いている。この非常事態を受け、日本感染症学会・日本環境感染学会は2月7日に新型コロナウイルスに関する医療従事者向けの緊急セミナーを、2月13日にメディア・市民向けのセミナーを開催した。そこでの東京医療保健大学大学院医療保健学研究科教授の菅原えりささんによる話を基に、一般の人が自分自身や高齢者などの身近なハイリスク者を守るためにすべきことを紹介する。

咳をするときに手で口や鼻を押さえるのはNG!
咳エチケットを知らない人はいないだろうが、とっさの時にちゃんとできるだろうか。写真=(c)twinsterphoto-123RF

正しい「咳エチケット」を知っていますか?

 新型コロナウイルスの感染経路についてはまだ分からないこともあるが、現在考えられているのは、接触感染と飛沫感染だ。接触感染とは、ウイルスが付いた手で口や鼻を触るなどして感染すること。飛沫感染とは、感染者の咳(せき)やくしゃみの飛沫の中にウイルスが含まれていて、それを介して感染することだ。

 「例えば、2人の人が向かい合って話をしている時に、一方が咳をするとウイルスを含んだ飛沫が飛び、1~2メートル以内の近距離だと相手の口元や洋服、手などに付く可能性があります。そのため、咳の症状がある人や、そういう人と近距離で話す人はマスクをすることが飛沫感染対策になります。また、ウイルスは洋服やテーブルなどの表面に付いたりもします。新型コロナウイルスの場合、ウイルスどのくらいの時間感染力を保つかは分かっていませんが、世界保健機関(WHO)は数時間とも言っており、ある程度の時間は継続する可能性を考えると、そうしたウイルスが手を介して口や鼻に入る接触感染の対策も必要になるわけです」(菅原さん)

 具体的には、通常の風邪やインフルエンザと同じく、新型コロナウイルスについても、「咳エチケット」と「手指の衛生」が2大対策となる、と菅原さんは言う。「それについては毎日報道されて既に知っている方も多いでしょうが、繰り返し情報を入れて体の中に染み込ませていくことが大事です」

 咳エチケットは、前述した通り、「飛沫感染を防止するため、咳やくしゃみの症状がある人はマスクを着用する」、また、「手に付いたウイルスが広がっていく接触感染を防止するため、咳やくしゃみをする時に口や鼻に手を当てないようにする」といった考え方だ。「2002~03年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した後に、この言葉が米疾病対策センター(CDC)ガイドラインに加わりました」(菅原さん)

 ちなみに、咳やくしゃみが出そうになったが、マスクは着用していない、ハンカチやティッシュをかばんから取り出して口や鼻を覆う余裕もない、という時は、自分の腕や袖で口や鼻を覆うといい。腕や服が汚れるのでベストとは言えないが、他人に浴びせたり、いろいろな物に触れる手を汚したりするよりはましだ。

咳エチケットとは? マスクを着用する。マスクがないときは、ティッシュはハンカチで口や鼻を覆う。とっさのときは、袖や腕でくりや鼻を覆う
写真はイメージ=(c) kimberrywood-123RF,(c) Leung Cho Pan-123RF ,(c) Brenda Carson-123RF

 ただ、頭では理解していても、とっさの時に適切な動きができるとは限らない。いざという時に正しい動きができるよう、日ごろから動きをイメージしておきたい。