女性活躍が進んでいるのはお金の流れに敏感な企業

 白河さんは、女性活躍やジェンダー平等に対する企業の動きについて、次のように話します。

 「今、女性の意思決定層が出ているのはお金の流れに敏感な企業、金融業界です。例えば、大和証券さんでは、2019年に初めて本社の女性副社長が誕生しました。しかも生え抜きの均等法第一世代です。ところで、女性の役員を見る時に注目していただきたいのが、取締役なのか執行役員なのかというところ。執行役員というのは議決権がありません。取締役は一票持っています。だから強い。女性は執行役員までは上がることができるけれど、その上の議決権を持つ取締役にはなれないという企業はすごく多いんです。その点において、大和証券グループ本社に、議決権を持つ取締役であり副社長である女性が誕生したというのは、歴史的にすごいことだと思っています」

 このように、責任ある地位に就く女性がお金に敏感でグローバルな企業から増えているのは、G20大阪首脳宣言、ESG投資、SDGsのゴール5、機関投資家からの圧力、コーポレートガバナンス・コードの改定や、30%クラブジャパンへの経団連の協力など、政治や経済からの様々なプレッシャーがあるからだと白河さん。

 「日本の場合、女性活躍というと女性に優しい制度や取り組みを行っている企業が入ってしまうのですが、グローバルなジェンダー平等のランキング指標はちょっと違っていて、一番のポイントは、男女平等かどうかというところ。経済の側面で女性が活躍し、男性も育児にコミットできる。そうした状況こそが経済的には合理的で持続可能性がある。それが、世界の、先進国の了解事項です」と日本と世界のギャップを解説。

 さらに、今後の潮流に関して、「ダイバーシティの実現は働き方とセット。多様な働き方がないダイバーシティなんて絵に描いた餅にすぎません。今までは、女性にだけ活躍しろ、両立しろと言っていたのが、働き方改革になって初めて、男女共に働き方を変えていきましょう、生産性の高い、長時間労働ではない働き方にしましょう、在宅勤務やフレックス、子連れ出勤ができる柔軟な働き方にしていきましょう、と変わってきました。今後は、女性だけでなく、男性も主語になり、男性にもいかに両立してもらうかが重要になる。また、お子さんが生まれたから両立が始まるわけではなく、ワークとライフの両立は育児の有無に関わらず誰にとっても大事なことであり、それが当たり前になる。そんな流れになると思います」と話してくれました。

ジェンダーギャップに関心の高いARIA世代が、熱心に白河さんのお話に耳を傾けていました
ジェンダーギャップに関心の高いARIA世代が、熱心に白河さんのお話に耳を傾けていました
ジェンダーギャップに関心の高いARIA世代が、熱心に白河さんのお話に耳を傾けていました

ARIA世代が今後目指していくべき方向性とは

 これから先、世界は女性性の時代になると白河さん。

 「恐らくこれからは、今までの経済の中では廃されてきた女性的なもの、女性性や、女性的なリーダーシップなどが見直され、注目され、必要とされる時代になると思います。多様性、ジェンダー平等は、経済にも、サスティナビリティにも不可欠であり、それがグローバルの中では常識であるということを、ぜひみなさんに、どんどん発信していっていただきたいと思います」

 また最後に白河さんは、会場にいる参加者に向け、次のようなメッセージをくださいました。

 「今までの当たり前を壊せるのはやっぱり女性なんです。今までの働き方、考え方、家庭のあり方、仕事のあり方など、これまでの当たり前を疑問に思ってください。そして、当たり前を壊すような仕組みをぜひ作ってください。その中から、きっと新しいものが生まれると、私は思っています」