プロレスの未来のために、逃げるわけにはいかない
棚橋 まず、自分の戦い方をがらりと変えました。プロレスはお客さんに見ていただいてなんぼのものだから、面白くなければ話にならない。プロレスラーの強いイメージとは真逆の、チャラさを前面に出すことから始め、次の試合にも足を運びたくなるように常に意識していました。
会場から「棚橋コール」が起きなければ、ゴングが鳴っても試合を始めないという荒業もやりましたね。もちろん、当初はブーイングの嵐。孤独な戦いでしたけど、プロレスの未来を考えたら逃げるわけにはいかなかった。
そんな僕の逆転の一冊になったのは『シンプルに考える』(森川亮著 ダイヤモンド社)。LINEの社長兼最高経営責任者(CEO)だった森川さんが退任直後に出した本です。LINEが最も勢いに乗っているときに次の道に進むなんて、普通の人では考えられないことですよね。
遠征先のホテルに置いてあったこの本を何気なく手に取ったのは、2015年のこと。その頃にはプロレスの暗黒時代は抜けていましたが、「成功を捨て続ける」という一言が胸に突き刺さりました。その本を読んで2000年代の暗黒時代に、僕がやった手法は間違っていなかったという確信になった。そして、今につながる新たな方向性のヒントにもなりました。
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⇒逆転の一冊 棚橋弘至「ヒット商品を作り続ける」ために
取材・文/吉井妙子 写真/洞澤佐智子
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