人生における「逆転の一冊」を聞くリレー連載。今回はTRFのDJ KOOさんの(下)です。56歳で見つかった脳動脈瘤(りゅう)。大手術からの復活を支えたのは、家族でした。長い人生の中で「一旦立ち止まる」ことの大切さ、立ち止まったから見えたことについても語ってくれました。

(上)授業参観は皆勤!娘を溺愛するDJ KOOの逆転の一冊
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「自分の存在がこの世にはもうないかもしれない」

編集部(以下、略) 50代で大病をし、頭を切る大きな手術をしたそうですね。

DJ KOOさん(以下、KOO) 5年前だから、56歳のときですね。それまでは人間ドックや健康診断には全く行っていませんでした。バラエティー番組の企画で健康診断を受けたら、脳動脈瘤(りゅう)が発見されて。医師から宣告されたときは、「来週自分の存在がこの世にはもうないかもしれない」と初めて感じて。「愛する家族とも会えないのではないか」なんて思ったことを覚えています。

 頭を半分くらい切る大手術だったんですが、手術室から出るとき、普段あまり感情を表に出すタイプではない娘が大泣きしていたと聞いて。僕も娘や奥さんに弱いところをあまり見せたくないんですけど、麻酔が切れるとものすごく痛くて。かっこ悪い自分も全部さらけ出しちゃいましたね。この病気をきっかけに家族みんなが健康でいることがいかに大切かを実感すると同時に、家族がますます1つになれた感じがします。娘は医療に興味を持ち始め、今は大学院で医療系の勉強をしています。

DJ KOO
DJ KOO
1961年、東京都生まれ。トータルCDセールスが2100万枚を超えるダンス&ボーカルグループTRFのDJ、リーダー。2017年から日本の文化である祭り、盆踊りとコラボレーションするなど、還暦を超えた現在も幅広く活動している。最新刊は、5年前の大病をきっかけに生活に取り入れた54のルーティンを紹介する『DJ KOO流 心・体・脳の整え方』(PHP研究所)

―― リハビリはどれくらいかかりましたか?

KOO 2カ月です。この2カ月はとてつもなく長く感じました。毎晩ウオーキングをしていたんですけど、ちょうど会社帰りの方や学校帰りの学生と行き違うんです。みんな普通に歩いて走れているのに、僕は今ここをゆっくり歩くのが精いっぱい。まだ口も開かなくて、普通の生活が送れないという状況です。人生で初めて大きなコンプレックスを持ちました。

 でも、家族が「生きてるだけでありがたいことなんだから、慌てないで」と言ってくれて。確かに、僕は幸運なことに早期発見できましたが、同じ病気で亡くなってしまう人もたくさんいます。これからのライフワークとして、健康診断、脳ドックの大切さを訴え続けたい。僕が言うことで1人でも2人でも、健康診断を受けて救われる人がいれば悲しい思いをするご家族も減りますから。

―― TRFを結成したのはDJ KOOさんが30代半ばの頃。2023年にはデビュー30周年を迎えますが、TRFとしての活動を一時休止した時期もありました。休止中は何をしていたのですか?