失恋に苦しむ自分を「俯瞰」する

望月 高校時代、失恋したときに出合ったのが、島田明徳先生の『「道(タオ)」の教え―無為自然に生きる』(PHP研究所)でした。島田先生は、母が通っていた気功教室の先生で、健康にいいからと、当時は家族全員で通っていたんです。

―― 手にとったきっかけが恋愛の悩みというのは、意外です。

望月 そうですか?(笑)。好きな人に振られるたびに悩んでいました。苦しくてつらい気持ちの中で、いったいこういう気持ちの浮き沈みって何なんだろうと思っていたんですね。

「無為自然に生きる」「私とは誰か」「愛について」などが論じられている。初めて手に取ったのは高校時代。本を開くと、半分以上の場所に線が引いてあった
「無為自然に生きる」「私とは誰か」「愛について」などが論じられている。初めて手に取ったのは高校時代。本を開くと、半分以上の場所に線が引いてあった

 けれども、この本の中には、例えば犬を見たときに「かわいいな」と思うのは、自分のこれまでの価値観や経験の中から「こういうものがかわいい」という目で犬を見てそう思っているのだということ。現実には、そこにただ犬がいるだけで、そこに意味を付けるのは自分の心の動きなのだということが書かれていた。つまり、失恋して苦しいときはどんなにきれいな景色だとしても濁って見えてしまうけれども、そう見えてしまうのは自分の心がそう捉えているから。そう考えられるようになった。

 思春期の心が過敏なときでしたが、つらいな、苦しいな、と自分が思ったときに、「ああ、まだとらわれているな」と一歩距離を置くことができるようになりました。島田先生の気功教室に通う中で瞑想をするのも日常になっていて、その効果も大きかったように思います。