「自分が生きる世界とは違う世界」を見せてくれた

壇蜜 自分とは違う世界の話を知りたかったのかもしれないですね。当時は男子校の話やスポーツに専念する人たちの漫画とか、ファンタジー系の小説とか、現実と違う世界の本をよく読んでいました。

 『黒鷺死体宅配便』は高校2年のときに本屋で見つけたんです。最初は、大学生たちが起業しているっていうのが新鮮で手に取ったんですよね。5人の主要な登場人物たちはいろいろな異能力を持っているんです。死体の声が聞こえたり、ハッキング、ダウジング(この本の中では死体の発見)、チャネリング(宇宙人との交信)ができたり、エンバーミング(死体の修復)ができたり。

『黒鷺死体宅配便』(大塚英志原作、山崎峰水作画/角川書店)。死体の声が聞ける主人公と、チャネリングやエンバーミングなど特殊な能力を持った若者たちが出会い、死体の望みを聞いて報酬と引き換えに、望みの場所に届ける会社を作るストーリー

 この5人は、人と人との隙間を埋めていくような仕事をしていました。すごく大変だろうけど、面白いんだろうなと興味を持ったんです。物語に自分を投影して、自分なら何ができるかなって考えてみたとき、チャネリングやダウジングは無理だけど、エンバーミング(遺体の衛生保存)だったらできるかもしれないっていう直感はありました。

 漫画の中ではアメリカに留学してエンバーマーの資格を取得しているんですけど、日本でも民間の資格として認められています。この漫画を読むにつれて、自分にはこの仕事ができそうな気がしちゃったんですよね。エンバーマーになることはこの頃からずっと頭の片隅にありましたが、親に言える雰囲気ではなかった。親は大学に行って普通に就職するのが当たり前だと思っていましたから。