裏切り、病気、孤独、死別、離婚、失業――ARIA世代にはあらゆるピンチが襲ってきます。人生のピンチに陥ったときに、局面を打開するきっかけになった「逆転の一冊」とは? 連載第4回は、演劇ユニット「TEAM NACS」が所属する芸能事務所クリエイティブオフィスキュー社長・伊藤亜由美さん。「北海道3部作」と呼ばれる映画を作る大きなきっかけになった雑誌『スロウ』について語ります。

(上)大泉洋を育てた人気劇団の母
(下)『スロウ』で知った北海道の原石 ←今回はここ

「北海道じゃないとダメなんだ」という人との出会い

―― 前回、伊藤さんの「逆転の一冊」として、「北海道のいいもの」「北海道でものづくりをする人たち」を紹介する雑誌『スロウ』を挙げてくださいました。北海道の食への興味は『スロウ』の影響が大きいですか?

伊藤亜由美さん(以下、敬称略) 『スロウ』に出合ったのは、ちょうどTEAM NACSのリーダー森崎博之が出演する「あぐり王国北海道」(現在は「あぐり王国北海道NEXT」HBC北海道放送)という、北海道の食と農業がテーマの番組の企画を提案していた2007年のことでした。

 北海道でなければできない食というコンテンツで、北海道の農業の応援と、「子どもたちに食育の大切さを伝えたい」という思いからでしたが、まさにこのタイミングで出合ったことに運命的なものを感じます。私自身、食べることは大好きでしたし、東京で北海道の食の魅力を再認識したこともあって、この頃から北海道の食を深堀りする使命感にかられました。

―― 東京進出から約2年が経過して、心境の変化もあったのでしょうか?

伊藤 『スロウ』に載っている代々家業を継いできた方や、北海道に移住して理想の暮らしを実現した人などは、私の知らない北海道の魅力を知っている人たちでした。でも、本に出てくる全員が「北海道のこの土地じゃないとダメなんだ」と誇りを持って生きていて。何というか、北海道に住まう人、暮らす人をさらに深く追求していきたい!という思いになりました。

伊藤さんが北海道の魅力を再認識するきっかけは、事務所の全国展開。さらに『スロウ』を読んで、自分がいかに北海道を知らないか痛感した
伊藤さんが北海道の魅力を再認識するきっかけは、事務所の全国展開。さらに『スロウ』を読んで、自分がいかに北海道を知らないか痛感した