「初めて見る北海道」が詰まった雑誌との出合い

 この時買った『スロウ』に載っていた方々に、その週末に車を飛ばして会いに行ったほど大きな衝撃を受けました。「初めて知る北海道」に、目からウロコでしたね。この時から、私の仕事や北海道に対する向き合い方が変わっていきました。間違いなく、私の「逆転の一冊」です。

「もっともっと北海道を楽しむコンセプト型通販付き雑誌」の『スロウ』は年4冊刊行。帯広市のソーゴー印刷が発行しており、道内主要書店で販売するほか、道内各地のカフェや宿、雑貨店などにも置かれている。伊藤さんがこの雑誌に出合ったのは2007年。事務所にはそれ以降のバックナンバーがそろっており、多くの付箋が貼られていた
「もっともっと北海道を楽しむコンセプト型通販付き雑誌」の『スロウ』は年4冊刊行。帯広市のソーゴー印刷が発行しており、道内主要書店で販売するほか、道内各地のカフェや宿、雑貨店などにも置かれている。伊藤さんがこの雑誌に出合ったのは2007年。事務所にはそれ以降のバックナンバーがそろっており、多くの付箋が貼られていた

―― 「北海道」にこだわって活動をする伊藤さんが、そこまで引きつけられた理由はなんだったのでしょうか。

伊藤 実は、私はそれまで北海道の魅力に気付いていなかったんですよね。でも、東京での仕事が増えてくると、行く現場のあちこちで「北海道を拠点に活動してるってスゴイですね!」と言われるんですよ。こういうタイミングで出合ったのが大きかったのかもしれません。

 東京で生活をしている人たちは、私たちが北海道に住んでいることを「羨ましい」と言うわけです。空気も食べ物もおいしくていいねって。でも、当時の私は、おすすめの観光スポットを聞かれても「うーん、羊ケ丘展望台とか、時計台とか……」みたいな感じで。今思えば、北海道に何もなかったわけではなくて、ただ私が「北海道のことを何も知らなかった」だけなんですよね。

 5月31日公開の(下)では、伊藤さんが『スロウ』のどこに感銘を受けたのかを語ります。

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逆転の一冊 伊藤亜由美『スロウ』で知った北海道の原石

取材・文/青田美穂 写真/川村 勲

伊藤亜由美(いとうあゆみ)
クリエイティブオフィスキュー代表取締役、プロデューサー
伊藤亜由美(いとうあゆみ) 1965年、北海道小樽市生まれ。札幌の短大を卒業後、アパレルで働きながら鈴井貴之氏主宰の劇団に役者として所属。1992年に鈴井氏とクリエイティブオフィスキュー創業した後「オフィスキューの母」としてTEAM NACSなど所属タレントの育成とプロデュースに力を注ぐ。2012年、北海道の食と地域とそこに生きる人々のライフスタイルを描いた自身の企画・プロデュースとなる映画『しあわせのパン』を皮切りに、2014年『ぶどうのなみだ』、2019年『そらのレストラン』の北海道3部作が公開され、話題に。『そらのレストラン』は7月10日にDVD発売、レンタルがスタート。