裏切り、病気、孤独、死別、離婚、失業――ARIA世代にはあらゆるピンチが襲ってきます。人生のピンチに陥ったときに、局面を打開するきっかけになった「逆転の一冊」とは? 連載第3回は、お笑い芸人・友近さんの虎の子の一冊です。「自分の過去も今も肯定してもらった」というノンフィクション『映画極道 五社英雄』。友近さんが、五社監督への熱い思いをぶちまけます。

(上)嫌われても構わない。もがいた20年
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逆転の一冊 友近「嫌われても構わない。もがいた20年」


五社監督は、ずっと「心の中にいた人」だった

―― 前回、逆転の1冊に『映画極道 五社英雄』(五社巴/徳間書店)を挙げてくださいました。

友近 私がコントで演じている、例えば「西尾一男」というおっさんの苦労を経てきたから漂う悲哀みたいなものは、五社英雄(ごしゃひでお)監督作品の影響が大きいと思います。五社作品と意識せずに見ていた子ども時代も含めると、五社さんは「自分の心にいた人」でした。そんな人の肉声を『映画極道 五社英雄』で初めて触れることができたんです。

「昔から『実録もの』の映画が好き。どん底に落ちた人間がどう立ち直っていくのか? という過程に興味があったんです」
「昔から『実録もの』の映画が好き。どん底に落ちた人間がどう立ち直っていくのか? という過程に興味があったんです」

友近 著者である娘の五社 巴さんとは、巴さんが週刊誌記者だった10年以上前に取材現場でお会いして以来、仲良くさせてもらっています。食事に行ったり、五社作品を特集上映した映画祭に呼んでいただいたり、私も番組やライブで紹介したり。とても明るくてかわいらしい女性で、作品の話はたくさんしました。ただ、監督本人についての話はほとんど聞いたことがありませんでした。

―― この本のどの部分が印象に残っていますか。

友近 この本で初めて、家庭での五社監督の生い立ち、巴さんの父に対する感情などを知って。トラブル続きの五社さんの人生そのものが映画みたいで本当に驚きました。こんな家庭も家族もムチャクチャな状態でよくも映画を撮り続けることができたと信じられないし、逆に不安定な精神状態や内面の苦悩があったからこそ五社作品が生まれたのかもしれないとも思いました。

 そして何より、「自分のやりたいことは貫き通す」という五社さんの不器用な生き方が、私の生き方に重なり、とても共感しました。