友近 芸人の作ったネタを変えようとするデリカシーがないスタッフさんへの反撃でもありますね(笑)。生意気だと言われるようなことはたくさん経験しましたけど、反対に、私のこだわりに共感してくれるスタッフさんにも出会えました。
「嫌われても構わない」と、自分を貫いた20年間
友近 芸人とスタッフは、互いを理解し合う対等な関係でないと面白いものは生まれません。私も修正の指摘が入って聞く耳を一切持たないわけではありません。だったらこうしましょうか? と代案を出すこともあります。
ただ、若手の頃は特に、スタッフさんから高圧的にネタを書き換えられてしまうことも少なくない。私は譲りませんでした。自分が面白いと思っているネタで世の中に問うて、ウケなかったら自分の責任。誰かに修正されたまま変えてウケなかったとき、責任を取れませんからね。
―― 後輩芸人の方たちとはどのようにお付き合いしているんですか?
友近 後輩芸人にはアドバイスなんてほぼしないです。食事にも行きますし、優しいもんです。でも、やっぱりみんなで集まると、グチ合戦になりますよ。私はすかさず、「(不満があるなら)本人に直接言いや!」と返しますけど、面と向かってはっきりと言う子は少ないように思います。もちろんその気持ちも分かります。ただ、私も聞いてしまったら黙っていられない性格だから、代弁して直接伝えちゃう。するとスタッフさんの間にある「こだわりが強いイメージ」に加えて、「後輩のことにまで口出しをする」という噂がますます広がるという(笑)。
それでも、約20年芸人を続けてやっと最近、「友近は本当に純粋にお笑いだけが好きでやっている」と周囲のスタッフさんたちが認めてくれている実感を、少しずつ抱けるようになってきました。昨年撮った松本人志さんの『ドキュメンタル』(Amazonプライム)は頭フル回転でお笑いをしているって感じでしたし、ゆりやんレトリィバァとの『チルテレ』(放映中、BS日テレ)は、本当にやりたいことを実現できています。
そんな状況のなか、最近読んだのが故・五社英雄(ごしゃひでお)監督の壮絶な半生を追った『映画極道 五社英雄』(五社巴/徳間書店)です。
「自分が約20年間貫いてきたことは信じていいのかもしれない」。理解者に出会えたような、かつてのリポーター時代の自分も、今の自分も肯定されたような気持ちに変えてくれた本です。