人生における「逆転の一冊」を聞くリレー連載。今回はシンガー・ソングライターのCharaさんの虎の子の一冊です。竹中直人×山田孝之×齊藤工の3人が監督に名を連ねる異色の映画『ゾッキ』で音楽監督を務めたCharaさん。1991年にデビューして以来、豊かな感性で絶え間なく音楽を進化させていますが、新たな挑戦をしたタイミングで、公私ともに大きな影響を受けた本を教えてくれました。

(上)逆転の一冊「3.11で考えた自分の役割」 ←今回はココ
(下)HIMIと一緒に映画主題歌を作った日の話

東日本大震災の頃に出合った「言の葉」

── Charaさんの人生の転機となったような「逆転の一冊」は何でしょうか。

Charaさん(以下、Chara) 友達が「すごく良かった」と言っていたので、ガウディのサグラダ・ファミリア(スペイン・バルセロナ)を見に行きたくなっていろいろ調べていたら、『ガウディの伝言』(外尾悦郎著)に行き着いたんです。まず、文章がすごくすてきなんですよね。特に言葉は“言の葉(ことのは)”と書く、ということについての内容がとても良くて。植物は、実を育てるためにたくさんの葉っぱを使い、実が熟す頃には葉っぱは役目を終えて枯れていくという内容も、自分が感じていることとも合って。

 この本を読んでいたのが、ちょうど2011年の東日本大震災の頃。2011年の8月にチャリティーソングとして発表した『伝言』という曲の歌詞の一部には、この本の影響が出ていますね。3.11がきっかけで生活が大きく変わった人も多いと思いますけど、日本は地震が多い国だっていうことに改めて向き合ったし、「明日死ぬかもしれない」って私は強く思ったんです。そこで、身勝手に生きるんじゃなくて、「私が本当にやるべきこと、私の役割って何だろう。それをやったほうがいい」と意識し始めて。この本によってそれを植え付けてもらった気がしました。それに、言葉って一度口に出したら引っ込められない。この本を読んだ後から、そういう話をするようになりましたね。

2011年にCharaさんが読んだ『ガウディの伝言』(光文社新書)。著者の外尾悦郎は、日本人で初めてサグラダ・ファミリアの彫刻を担当した。建築家からの「大窓の周りは数百のフルーツと葉をちりばめよ」という指示に対し、外尾は「何を象徴しているのかが分からないと、どんな葉っぱを彫ればいいのか見当がつかない」とその意味について考えた。そして「私は今、たくさんの言の葉を送り出している」と考察を深めていく
2011年にCharaさんが読んだ『ガウディの伝言』(光文社新書)。著者の外尾悦郎は、日本人で初めてサグラダ・ファミリアの彫刻を担当した。建築家からの「大窓の周りは数百のフルーツと葉をちりばめよ」という指示に対し、外尾は「何を象徴しているのかが分からないと、どんな葉っぱを彫ればいいのか見当がつかない」とその意味について考えた。そして「私は今、たくさんの言の葉を送り出している」と考察を深めていく

── コロナ禍でもそうですが、東日本大震災時にも芸術は不要不急なのか、という議論がありました。それについてはどう感じましたか?