舞台に挑戦して「積極的に恥をかこう」と開眼

坂井 そうです。20代の終わりに「西遊記」、30代の頭に「髑髏(どくろ)城の七人~アカドクロ」と、劇団☆新感線の舞台に続けて出演しました。稽古で舞台に立ったとき、何もできない自分にあぜんとしました。テレビドラマでは目や口元などで感情を表現するクローズアップショットが多く求められたのですが、舞台では全身で表現をしなくてはなりません。それまでは、演出家の方に演出をしてもらった上でカメラの前に立っていましたが、舞台では自分で演じて観客に見せる。恥ずかしながら、自分はお芝居が何もできていなかったことに気づきました。

 そのときに、思ったんです。これからは積極的に恥をかいていこう、と。そう思えたときから心が楽になり、あとは進むのみです。女優として変わることができたと思います。

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取材・文/金丸裕子 構成/市川礼子(日経ARIA編集部) 写真/斉藤順子 スタイリスト/梅山弘子(KiKi inc.)、ヘアメイク/ナライユミ

坂井真紀
女優
坂井真紀 さかい・まき/1970年、東京生まれ。1992年に女優デビュー後1996年に『ユーリ』で映画デビュー。2008年、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』で第18回日本映画批評家大賞助演女優賞、第23回高崎映画祭特別賞を受賞。最新作は、在宅医療のスペシャリスト・長尾和宏のベストセラー『痛くない死に方』『痛い在宅医』を、高橋伴明監督が映画化した『痛くない死に方』(主演:柄本佑)。シネスイッチ銀座他で公開中