振り回されているものから離れたいのであれば、一度リセットしてみたらどうかなと思いますし、頑張りたいというハンドルを自分が持ってるなら頑張ってもいい。私のように自己肯定感が低いからこそ頑張ってこられたと、闇が光に変わる瞬間がありますよ。

 この本の中に「人生は洗濯機の中でもまれる石のようなものだ。粉砕されて出てくるか磨かれて出てくるか、けっきょくは、それぞれの人が選択している」という一節があるのですが、自分を奮起させることや、プラスに変えられることが分かってくると、洗濯機に入れられても粉砕されない。60歳を前に、やっと自分が磨かれるという自負が持てました。

―― この先はどういうビジョンを持っていますか?

小巻 せっかくご縁があってピューロランドの仕事をしているので、キャラクターたちの活躍の可能性をもっと探ってみたいです。デザインやグッズ、エンターテイメント以外の分野で活躍できることがあるのではないかな、と。

 もう一つは65歳からでも70歳からでも海外に留学したいです。オランダの大学で対話的自己論をもっと学びたい。学ぶことと仕事は二律背反ではないので、今の仕事をしながらでもあると思いますし。また次世代に今の仕事を渡すときもあるでしょうから、そのときに潔くバトンを渡せるようにしておきたいです。

「それは私の荷物じゃない」と思えるようになった

 会社のことも2人の息子たちのこともベストは尽くしますが、ここから先は私が背負うことじゃない、というポイントをつかめるようになりました。人の課題に対して「それは私の荷物じゃない」と思える日がやっと来たんです。人は悩むことで体力を付けるのだから、その悩みを奪ってはいけない。「その人の荷物を肩代わりしては罪」と思えたら、人間関係も本当に楽になりました。今は毎日が楽しくて仕方がないです。

小巻さんの人生を支えた3冊
(右から) 活気があるオフィスにするにはどうしたらいいかを描いた『フィッシュ!』(スティーブン・C・ランディンほか著/早川書房)はストーリー形式で読みやすい。『出現する未来』(P・センゲ、O.シャーマーほか/講談社)は「学習する組織」について書いたビジネスの名著。今の時代のリーダーシップが分かる一冊。『イヤシノウタ』(吉本ばなな著/新潮社)。プライベートでも親交のある吉本ばななの著書は「どれも読むと心が癒やされます」。
(右から) 活気があるオフィスにするにはどうしたらいいかを描いた『フィッシュ!』(スティーブン・C・ランディンほか著/早川書房)はストーリー形式で読みやすい。『出現する未来』(P・センゲ、O.シャーマーほか/講談社)は「学習する組織」について書いたビジネスの名著。今の時代のリーダーシップが分かる一冊。『イヤシノウタ』(吉本ばなな著/新潮社)。プライベートでも親交のある吉本ばななの著書は「どれも読むと心が癒やされます」。

取材・文/竹下順子 写真/洞澤佐智子

小巻亜矢(こまきあや)
サンリオピューロランド館長
小巻亜矢(こまきあや) 1959年、東京都生まれ。1982年サンリオに入社後、結婚退職。離婚後に化粧品関係の仕事で復職。2008年企業内起業で女性支援のための株式会社Nal、NPO法人ハロードリーム実行委員会を設立。2010年子宮頸がん予防啓発プロジェクトHellosmile設立。2014年サンリオエンターテイメント顧問に赴任、翌年サンリオピューロランド館長に就任。