異なる角度からフェミニズムとアートの関係を問いかける注目の展覧会「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」、「フェミニズムズ / FEMINISMS」が、金沢21世紀美術館で開催中だ。(下)では「フェミニズムズ / FEMINISMS」についてリポート。2021年4月に館長に就任し「不確実性の高い時代に、現代アートは強い」と力を込めた長谷川祐子さんにも話を聞いた。
(上)フェミニズムを語るときの「ぎこちなさ」 アートで考察
(下)「複数形のフェミニズム」を提示 金沢21世紀美術館 ←今回はココ
「ピンクが好き」と言える強さを獲得した女性たち
金沢21世紀美術館で「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」と同時に開催されている「フェミニズムズ / FEMINISMS」展は、世界観が一変。最初の部屋は、人形が中央に陣取り、ピンクが主張する空間だった。「展覧会のテーマの一つは、日本のガーリーカルチャーとフェミニズムとの接点がどこにあったのかということ」と話すのは、金沢21世紀美術館学芸員・高橋律子さんだ。
「接点の一つに、“ピンクの獲得”があるのではないかと考えています。ピンクは“女の子らしさ”のステレオタイプとして女性を縛ってきたもの。女性たちがそのピンクを『好き』と言える強さを獲得できたのが、1990年代以降のガーリーカルチャーの特徴です。ピンクのかわいらしさ、わい雑さといった多義性を、1990年代から現代美術を通してポップカルチャーとして発表してきた西山美なコさんの作品を起点としたかった」(高橋さん)
展示されているのは、9人の作家による写真、映像、立体作品、日本画、刺しゅうを施した作品。東洋の美しい男性像を「美人画」として描く木村了子さんは、「イケメンを16年間描いてきました。自分の恋愛対象である男性を描いたほうが美人画的な色気、憧れといったさまざまな思いを投影できます」と言う。
かつては女性画を描いていたが、その時に男性からかけられた「エロチックな女性像を描くなら、もっと自分をさらけ出すべきだ」「上村松園(近代日本を代表する女性画家で美人画の名手)は女性器を描いたが、そこまでしたことがあるのか」などの言葉に違和感を持っていた。