ジェンダー・ギャップ指数121位の日本に住む私たちが必見の展覧会が国立歴史民俗博物館で開催中です。そもそも、「なぜ、男女で区別するようになったのか?」。たまには博物館で考えてみませんか。

「れきはく」でジェンダーを考える

 2020年、日経ARIAが最も注目する展覧会がいよいよ始まりました! 展覧会名はズバリ、「性差(ジェンダー)の日本史」(国立歴史民俗博物館、12月6日まで開催)。皆さん、国立歴史民俗博物館、通称「れきはく」に行ったことはありますか? 東京駅から最寄りの京成佐倉駅まで電車で軽く1時間以上、さらに駅から徒歩15分もかかる渋めの場所にありますが、展示の内容もこれまた渋い。過去に「大ニセモノ博覧会」展(2015年)を行ったときは、国立の博物館がニセモノばかりを並べる展覧会を!? と衝撃が走りました。

 今回の展覧会は、そもそも「なぜ、男女で区別をするようになったのか?」、そして「男女の区別の中で人々はどう生きていたか?」を280点以上の資料を通してひもとく意欲的なもの。国立歴史民俗博物館館長・西谷大さんは、本展について「日本社会に突き付けられた日本の性差、ジェンダーの問題を考える上で意義がある。なぜ、性差が生まれたのか? まずはその事実を知り、直視し、自分たちの問題として自覚する役割があると考えています」と言います。

会場に入ってすぐ目に入る、女性を中心とする人物埴輪群像(栃木県・甲塚古墳)。6世紀後半、古墳時代のもの
会場に入ってすぐ目に入る、女性を中心とする人物埴輪群像(栃木県・甲塚古墳)。6世紀後半、古墳時代のもの
会場に入ってすぐ目に入る、女性を中心とする人物埴輪群像(栃木県・甲塚古墳)。6世紀後半、古墳時代のもの
滋賀県八日市新地にあった貸座敷の様子を再現した展示。衣紋掛けや鏡台、遊客の滞在時間を計る道具など、遊女の生活道具が展示されている。本展では性の売買がいつから始まったかにも迫る
滋賀県八日市新地にあった貸座敷の様子を再現した展示。衣紋掛けや鏡台、遊客の滞在時間を計る道具など、遊女の生活道具が展示されている。本展では性の売買がいつから始まったかにも迫る

性差は「初めから」あったものではない!

 欧米では博物館がジェンダーの視点を取り入れて展示するのが常識化しており、韓国や台湾も日本よりかなり進んでいる、と西谷館長は指摘します。「(現在のような)性差は人類の歴史の初めから存在したものではありません。時代の流れや、政治制度が確立していく過程でつくりあげられたものです。今回のように魏志倭人伝の時代から現代までの通史としてジェンダーをテーマに展示するのは、歴史系の博物館としておそらく日本で初めてのこと。さらに例えば遊廓(ゆうかく)の歴史を扱うのもおそらく初めてでしょう」

 埴輪(はにわ)から木簡、古代の書物、仏像、屏風、着物、重要文化財の絵画、ポスター、3D映像、遊廓で使われた洗浄器(!)まで、あらゆる文物をジェンダーの視点で捉え直すことで、必ずや気づきが得られるはずです。次ページからは、注目の出展作品について解説します。

「性差(ジェンダー)の日本史」展の構成
第1章 古代社会の男女
第2章 中世の政治と男女
第3章 中世の家と宗教
第4章 仕事とくらしのジェンダー ―中世から近世へ―
第5章 分離から排除へ ―近世・近代の政治空間とジェンダーの変容―
第6章 性の売買と社会
第7章 仕事とくらしのジェンダー ―近代から現代へ―