猛暑をやり過ごすのに最適なのが美術館。「北海道までわざわざ見に行く価値あり」な作品が待つ美術展を筆頭に、2019年夏に必見の美術展を3つ厳選しました。

「札幌にだけ」上陸! カラヴァッジョの日本初公開作品

 16世紀末から17世紀前半のイタリアで絶大な人気を誇った画家といえば、カラヴァッジョ。光と影を巧みに扱い、ダイナミックな構成で17世紀にバロックという新時代を切り開きました。イタリアの国民的画家として活躍する一方、カラヴァッジョは放埓な生活を送り、行く先々で人々と衝突。34歳でけんか相手を斬り殺して逃亡生活を送った末、38歳で熱病にかかり、その短い人生に幕を下ろしました。

 描く絵も、人生もドラマチック過ぎるカラヴァッジョの現存作品は60数点。そんな彼の貴重な作品が8月10日から札幌で開催される「カラヴァッジョ展」で日本初公開されます。「えっまたカラヴァッジョ展? 2016年の春に東京でもあったやつでしょ?」と思うなかれ。札幌、大阪、名古屋の3会場で開催される2019年版のカラヴァッジョ展では、それぞれの会場で日本初公開の作品があり、いずれも見逃せません。

 「日本初公開の『病めるバッカス』は、1607年、時のローマ教皇パウルス5世が、甥にあたる枢機卿スキピオーネ・ボルゲーゼに与えた作品で、以後ボルゲーゼ家が代々所蔵し、現在はローマのボルゲーゼ美術館を代表する名品の一つに数えられます」(成安造形大学教授・千速敏男さん)

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『病めるバッカス』
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『病めるバッカス』
1594年頃/油彩・キャンバス/ボルゲーゼ美術館 ※札幌展のみ出品 (C)Ministero per i Beni e le attivita culturali - Galleria Borghese
「カラヴァッジョは、背後を真っ暗闇にした強烈で劇的な明暗の対比と、克明な写実性によって一世を風靡し、ヨーロッパ全域の若い画家たちに強い影響を及ぼしました。彼のこの特徴は、すでにこの作品にも見てとることができます」(千速さん)