16人全員がキャリア50年以上、そして現役。71歳から106歳の女性アーティストの作品が森美術館(東京・港区)に集結しています。女性であることが不利で厳しかった状況につぶされることなく、信念を貫き通して作品を生み出してきた彼女たちの情熱。作品の放つパワーとアーティストたちの言葉に心が震える展覧会です

再評価が進む女性アーティストたち

 世界各国で活躍する71歳から106歳までの女性現役アーティストの活動に光を当てた展覧会「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」が森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階、9月26日まで)で開催中だ。「現代アート界ではこの10年で、長くキャリアを重ねてきた女性アーティストの再評価が急速に進んでいます」と話すのは、本展を企画した森美術館館長・片岡真実さん。

 「50年以上キャリアがある女性アーティストの作品が並ぶ展覧会ではありますが、必ずしも女性性、つまり『女性とは何か』といったようなことを中心にした展覧会とは言い切れません。フェミニズム的な立ち位置が明らかなアーティストがいる一方で、ジェンダーという観点とほぼ関係なく、芸術性を追求してきたアーティストもいます。年齢を重ねることに“老い”や“減速”といったイメージをお持ちの方は、この展覧会をご覧になるとぶっ飛ばされるのではないかと思います」(片岡さん)

 16人の選定基準は「近年、国際的な評価が著しく高まっている」、もしくは「国際的な評価が待たれる」アーティストであること。選定は片岡さんと、ドイツ在住のインディペンデント・キュレーターであるマーティン・ゲルマンさんとで行った。

本展で最初に展示されるフィリダ・バーロウ(1944年、英国生まれ)の大型彫刻作品。工業用材料や色鮮やかに着彩されたキャンバスを、高さの異なる28本の脚が支えている。展示風景より『アンダーカバー2』(2020年)
本展で最初に展示されるフィリダ・バーロウ(1944年、英国生まれ)の大型彫刻作品。工業用材料や色鮮やかに着彩されたキャンバスを、高さの異なる28本の脚が支えている。展示風景より『アンダーカバー2』(2020年)
1970年代、米国西海岸における女性解放運動に深く関わったスザンヌ・レイシー(1945年、米国生まれ)。出品作はニューヨーク、ブルックリンの一角で365人の活動家が社会問題について話し合ったプロジェクト『玄関と通りのあいだ』(2013年)の記録映像。展示風景より
1970年代、米国西海岸における女性解放運動に深く関わったスザンヌ・レイシー(1945年、米国生まれ)。出品作はニューヨーク、ブルックリンの一角で365人の活動家が社会問題について話し合ったプロジェクト『玄関と通りのあいだ』(2013年)の記録映像。展示風景より
新聞を陶で表現した立体作品の横に立つ三島喜美代(1932年、大阪府生まれ)。自身の創作を「ごみを一生懸命作っています」と表現する。「命を懸けて遊んでいるっていう感じですね」
新聞を陶で表現した立体作品の横に立つ三島喜美代(1932年、大阪府生まれ)。自身の創作を「ごみを一生懸命作っています」と表現する。「命を懸けて遊んでいるっていう感じですね」
2020年から森美術館館長を務める片岡さん。「3年くらい前から準備を進めていました。“女性館長だから”この展覧会を企画したわけではありません。私が男性であったとしても企画していたと思います」
2020年から森美術館館長を務める片岡さん。「3年くらい前から準備を進めていました。“女性館長だから”この展覧会を企画したわけではありません。私が男性であったとしても企画していたと思います」