この連載では、ARIA世代が今、「ドヤ顔して語りたい画家」について小気味よくご紹介。今回は、印象派の父として知られるクロード・モネに迫ります。2016年、パリでモネの「幻の大作」が発見され、大きな話題となりました。この大作をモネから直接購入したのは、なんと意外な日本人。数奇な運命をたどった末、現在は国立西洋美術館で公開中です。この作品に秘められたエピソードとは? コラムの最後には、今週のオススメ美術展情報も載せているのでチェック!

モネの大作は、なぜ「幻の作品」となっていたのか

 長らく姿を消していたクロード・モネの大作『睡蓮、柳の反映』がパリ・ルーヴル美術館の倉庫で発見された、というビッグニュースが飛び込んできたのは、2016年秋のこと。1年の修復を経て、なんと日本の国立西洋美術館(東京都・台東区)で公開されています(9月23日まで)。

 「川崎造船所の初代社長・松方幸次郎(父は明治の元勲で内閣総理大臣も務めた松方正義)が購入した作品の一つとして知られながら、長らく行方が分からなかった作品です。ドラム缶ほどの太さに巻かれたその絵を目にしたときは、『よくぞ、見つかってくれた』という思いでした」(国立西洋美術館主任研究員・陳岡めぐみさん)

 横約4.25mもの巨大な作品がなぜ、行方不明になっていたのでしょうか。

 この絵をモネから直接購入した松方は、「日本に美術館をつくり、本物の西洋の美術を見せてあげたい」との志を持ち、第1次世界大戦時に船舶特需で得た巨万の富をつぎ込んで西洋美術の収集に当たりました。

 しかし松方が買い集めた西洋美術の一部をパリに留め置いている間に、第2次世界大戦が勃発。戦局が激しさを増すなかで作品の多くを疎開させましたが、大きな損傷を受けてしまったものも。終戦直前にはフランス政府が「敵国人財産」として接収。このうち375点が戦後に日本へ戻りますが、「この作品は破損状態のひどさから、フランスに残す作品リストにも、日本に引き渡されるリストにも入らず、そのまま忘れ去られてしまったのだと考えられます」(陳岡さん)

クロード・モネ『睡蓮、柳の反映』(修復後)
1916年/油彩・キャンバス/国立西洋美術館(旧松方コレクション)
2016年秋にルーヴル美術館の倉庫で発見された大作。第2次世界大戦期に、爆撃やナチスの収奪を避けてフランス北部の民家に疎開していた。上部の損傷が激しいが、修復は最小限に留めて公開中