狩野山雪『梅花遊禽図襖』(ばいかゆうきんずふすま)
狩野山雪『梅花遊禽図襖』(ばいかゆうきんずふすま)
重要文化財  紙本金地着色/四面/寛永8(1631)年/京都・天球院

香りなき香りを嗅ぎ、風なき風を感じることができる絵

 豪華絢爛! 古典的な花鳥図! これぞ狩野派! ……と思った後に目を凝らすと、春を告げる梅の花に蔦の紅葉というあり得ない組み合わせを発見。コの字形にグイーーーンと屈曲する幹はもだえているかのようで、黒々とした幹や岩と金箔の地との対比も強烈でエキセントリックな印象です。

 「山雪のすごみは、自然の捉え方と独特な造形思考にあります。この絵を見ていると、描かれた花の香りなき香りを嗅ぐことができ、風なき風を感じることができるように思われます。それを油絵によるリアリズムとは違う表現で実現している。これは海外の人にとってはミラクルなことで、日本美術が尊敬されている点の一つです。

 また、山雪は伝統的かつ典型的な日本画のタイプを踏襲してただコピーをしたのではなく、そこに自分が絵師として何が付け加えられるかを考え尽くした。感覚的に描いたのではなく、構図なども非常に計算された絵です」(中原さん)