歴史マンガを描くのは、「人間の法則」を歴史から探るため

マリ 私が歴史マンガを描くのは、例えば古代ローマの1000年にも及ぶ歴史を見れば、「人間ってこういう生き物で、こういうことをやらかしてしまう」という法則が分かるから。

 偉業だけでなく、愚かなことも惨めなことも大失敗も含めて知ることのほうが、非現実的な妄想にしがみついたり、無為な理想を抱いたりするよりずっと心強い気持ちになります。とんでもない顛末(てんまつ)と向き合っても「ああ、これね」と落ち着いて受け止められますし、「なんでこんなことに!」なんて絶望したり悲観したりもなくなる。歴史マンガを描くことで社会と自分自身を俯瞰する視点が持てるんです。

 そういう人間のダメな部分と向き合って生きていると、強いメンタリティが醸成される。誰かに依存することもなく、「ちょっとやそっとでは動じない頼りがいのある自分」をより一層、さらに太くしていけるようになるのだと思います。

(第3回は来週公開。お楽しみに)

取材・文/柳本 操 写真/洞澤佐智子