―― マリさんが未婚で生んだ赤ちゃんを抱えて日本に帰国した時、リョウコさんが「仕方ない、孫の代までは私の責任だ!」と満面の笑みで言い切ったのはすごいと思いました。

マリ 黙って未婚で子どもを産んで帰ったわけですから、一般的には「そんな非常識なことをして、いったいこれからどうするつもりなの!」と責められても仕方ない状況です。でも、リョウコの反応は違ったんです。むしろこの予測のつかない人生の展開にワクワクしていました。

お金がないのは恐るるに足らず! 「比較」をやめると人生はラクになる

マリ リョウコにとっては「黙って未婚で子どもを産む」という展開は、不安や怒りとは直結しないんです。リョウコは人と比較したり、生き方に対して執拗な理想や思い入れを持たない人。人間って、どうしても比較してしまう生き物だと思うんです。比較するというたがを取るのが最も大きなハードルかもしれません。でも、そのたがが取れると、人生はラクになります

―― 「ああしなさい、こうしなさい」とガミガミ言われた覚えもないそうですね。

マリ もちろん怒られたことがないわけではないし、ケンカもありましたよ。でも、リョウコは基本的に「人は皆、それぞれ違う生き物。周りと同じにできなくても当たり前」という理念を伝えようとしていたと思います。

 とにかく私がわんぱくしている話を聞くのが好きみたいで、「今日は学区内の禁止区域に行ってきた!」というと、「え、どうだった? 何があった?」と目を輝かせる。車で走っていても、急停車して「ストーップ! 今タヌキいたよね? 飼いたいから探そう!」って言うんですから。子どもながらに、なんかいいなあこの人、天真爛漫(らんまん)に地球をエンジョイしてて……って見てました。