働き方や生き方を変える、住む場所や働く場所を変える、そんなライフシフトをいつかやってみたい――ひそかにそう思っているARIA世代はたくさんいます。数々のライフシフターを取材してきた河野純子さんによるライフシフト解説。今回は、最終回です。読者が不安に感じている、ライフシフトにまつわるお金や時間について。3人の実例を紹介しながら、お金と時間の不安解消法を探ります。

 「自分が主人公」の人生へとライフシフトするための法則について、これまで6回にわたってお話してきました。最終回の今回は、ライフシフトにまつわるお金や時間についてです。「何かを学びたいけれど、お金も時間もない……」「好きな仕事にチャレンジしたいけれど、収入ダウンが不安……」。よく聞くそんな悩みについて考えていきます。

「不安のほうが大きくて、1歩踏み出すのに躊躇(ちゅうちょ)しています」という読者は多いはず
「不安のほうが大きくて、1歩踏み出すのに躊躇(ちゅうちょ)しています」という読者は多いはず

15年かけた長期戦略で4カ月の語学留学を実現

 まず53歳で、長年の目標だった語学留学を実現させたMさんを紹介しましょう。Mさんは、学生時代から英語が好きで、いつかは英語を使う仕事をしたいという夢を持っていましたが、早くに結婚し、3人の子育てに追われる専業主婦生活を15年続けることになります。一番下の子どもを保育園に預けて37歳で社会復帰した時の「ワクワク感」は今でも忘れられないそう。そしてそのとき決意します。今の英語力では無理だけれど、この子が大学に入学したら、絶対に留学をして、それ以降は英語で仕事をしようと。

 そこからMさんの長期戦略が始まります。誰にも文句を言わせずに留学するには、費用を自力で貯めるしかないとコツコツ貯金を続けるとともに、英会話の勉強を再開。そして15年後についにその日がやってきます。一番下の子どもが大学に無事に入学した年に仕事をすっぱり辞め、夫と子どもたち3人に家事の分担を割り振り、アメリカへと旅立つのです。

 4カ月の語学留学でかかった費用は学費100万円、飛行機や滞在費を含めると計235万円。すべて自分で働いたお金から捻出しました。充実した留学生活を終えて帰国したのちは、以前から狙っていた英語を生かせる仕事に再就職。Mさんが不在だった4カ月の間に家族もすっかり自立してくれたこともあり、今はまさに自分が主人公の生活を送っています。