介護福祉士、美容師、ケアマネジャーの資格を持つ写真家山田真由美さんは、50歳になった2020年、高齢者向けにメイク・ヘアセットをして写真を撮る出張撮影サービスを行う会社を立ち上げた。「60歳になったときに輝いていたい」という思いで、安定した介護職員の仕事を手放し、写真家に転身した山田さんはどのようにしてanother STAGEを見つけたのだろうか。

(上)介護士→美容師→50歳で写真家に 高齢者を輝かせたい
(下)50歳の新人写真家が起業 60歳の私が輝くために ←今回はココ

介護職員の企画提案は、前代未聞だった

 42歳で美容師の資格を取得した山田さんは、「仕事を辞めずにやりたいことをやる」ため、勤務先の介護施設に新規事業を提案した。提案内容は、美容事業部を立ち上げて介護施設内に美容室を常設し、入居者向けの美容サービスを提供するというもの。

 「美容事業部を立ち上げ、自分も施設内の美容室で働けば、介護職を辞めずに美容師経験を積み、技術を磨けるのではないか、と考えたのです。実際、系列の施設を合わせると約900人の入居者を抱えていましたから、美容サービスを外注せずに行えたら、施設にとっても入居者にとってもメリットは大きいのではないかと思いました」

介護施設で働いていた山田さんは、美容の力に気づいて一念発起。39歳で通信制の美容学校へ入学し、介護の仕事を続けながら3年間学んだ
介護施設で働いていた山田さんは、美容の力に気づいて一念発起。39歳で通信制の美容学校へ入学し、介護の仕事を続けながら3年間学んだ

 しかし、「一般財団法人として営利事業はできない」という理由で、あえなく却下。ただ、一介護職員が経営層に対して新規事業を提案するという、当時の施設では前代未聞のことに「提案した職員にぜひ話を聞いてみたい」と企画部長から思わぬ声がかかった。美容事業の構想を話すと「利益を上げる事業としては難しいが、レクリエーションの一環として美容イベントを行うという形ならばOK」という許可が下り、同じ職場の元エステティシャンと元化粧品販売員と3人で美容イベントを行う美容事業プロジェクトを立ち上げることとなった。