介護福祉士、美容師、ケアマネジャーの資格を持ち、50歳で写真家に転身した女性がいる。介護現場で15年働いた経験を生かし、高齢者向けにメイク・ヘアセットをして写真を撮る出張撮影サービスを行う会社を立ち上げた山田真由美さんだ。介護職員から写真家へ。大胆な転身のように思えるが、実は目の前の問題を解消するために必要な資格をコツコツと取得し、技術を身に付け、経験を重ね、一歩一歩進んできたからこそ見つけたanother STAGEだった。

(上)介護士→美容師→50歳で写真家に 高齢者を輝かせたい ←今回はココ
(下)50歳の新人写真家が起業 60歳の私が輝くために

メイクで元気を取り戻した高齢者を見て

 写真家の山田真由美さん(50歳)は、2020年、高齢者向けにメイク・ヘアセットをして写真撮影を行う出張撮影サービスを提供する会社を起業した。美容師の資格を持つ山田さんは、メイク、ヘアセット、撮影のすべてをこなし、遺影を撮るサービスとして日本郵便の終活紹介サービスメニューの1つにも選ばれた。

 実は山田さんの前職は介護職。介護施設で、日々高齢者と接するなかで、メイクをし、ネイルを施すと施設の高齢者たちがイキイキして元気を取り戻すことに気づいた。

 「認知症が進んでふさぎ込み、悪態ばかりついていたおばあちゃんも、髪を整えたり、メイクやネイルをしてあげたりすると、『あら、かわいい』と穏やかな表情になって、笑顔を取り戻すのです。寝たきりでリハビリをしたがらなかったおばあちゃんにメイクをしたら、『みんなに見せてくる』とスタスタ歩き出したこともありました」

 また、高齢者が亡くなった後に遺族が「いい写真がない」と慌て、ピント外れの残念なスナップ写真が遺影として使われているケースも数多く見てきた。「写真を撮る機会が少ない高齢者にメイクできれいになってもらい、ご家族との楽しい時間と笑顔の写真を残してあげたい。そう考えてこのサービスを立ち上げました」

「60歳になったときに輝いていたい」という思いから、安定した介護職員の仕事を⼿放して写真家に転身。50歳で起業という選択をした山田さん
「60歳になったときに輝いていたい」という思いから、安定した介護職員の仕事を⼿放して写真家に転身。50歳で起業という選択をした山田さん

 50歳にして新たなキャリアをスタートさせたが、もともと「キャリアアップには全く興味がなかった」という。高校卒業後、大手企業でOLをしていた山田さんは、23歳で結婚退社し、翌年、長男を出産。義父母と同居するため、二世帯住居を建てた。26歳で家のローン返済の足しにしたいと近所の商店街でパートを始め、子どもが小学校に通うようになった頃、近所のマクドナルドで働き始めた。