高齢者たちが元気になる――美容の力はすごい!

 自立型の有料老人ホームとは、介護の必要のない高齢者も入居でき、入居者の状態に応じて介護サービスを受けることができる老人ホームのこと。山田さんは、この施設に暮らす高齢者たちの姿に衝撃を受けたという。

 「同じ80歳でも特別養護老人ホームにいた80歳とは違いました。朝からきちんとおしゃれをしてお化粧をして、お食事に出かけていくおばあちゃんたちはとても若々しくてイキイキしていて。もちろん、元気だからおしゃれをしているということもありますが、おしゃれをしてお化粧もするから元気になる、ということもあるんですよね」

 とはいえ、入居時には元気だった高齢者も年を重ねるうち徐々に衰え、気難しくなったり、ふさぎ込みがちになったりしていく。山田さんは入居者にメイクをしてあげたり、ネイルをしてあげたりすると、おばあちゃんたちが優しく穏やかになることに気づいた。

 「メイクの力はすごいです。認知症がかなり進み、不平不満ばかり言っていたおばあちゃんも、お化粧やネイルをしてあげると、自分が女性としてイキイキしていたことを思い出すのか、言葉遣いまで変わって穏やかになったりするんです。周囲からも注目され『キレイ』『かわいい』など、ポジティブな言葉をかけられ、笑顔が引き出されると、同じ部屋にいたおじいちゃんもうれしそうに眺めていたりして、その場の雰囲気がものすごく良くなります。介護予防という観点からも、メンタルケアという観点からも、美容には女性を元気にする大きな力があるのではないかと考えるようになりました」