「ホスピタリティーはいらない」介護の世界で見た現実

 特別養護老人ホーム(通称:特養。中~重度の要介護高齢者が身体介護や生活支援を受けて居住する施設)で働き始めた山田さん。介護の仕事はきつかったが、その分達成感もあり、おむつ替えなどの作業も苦にならず、仕事自体は向いていると感じていた。だが、しばらくすると、施設の介護方針に違和感を持つようになった。

 「当時の特養で提供していたのは、『サービス』とは呼べないものだと感じました。入居している高齢者に喜んでもらいたくて何かをすると、『余計なことはしないで』と言われてしまって。職員たちは『お世話をしてあげている』という感覚。私はマクドナルドでお客様に喜んでもらうことをモチベーションに働いていたこともあり、こんな風にホスピタリティーを否定されてしまうような仕事は向いていない、と感じるようになりました

 3年間は続けたものの、施設の方針にどうしても納得できなかった。介護の仕事を辞めようかと悩んでいたところ、「辞める前に一度、来てみない?」と友人から誘われ、自立型の有料老人ホームで働き始めた。