がんを経験した人のために、運動教室や健康管理を学ぶ講座を主催する一般社団法人、キャンサーフィットネス。代表理事の広瀬真奈美さん(56歳)は45歳の時にかかった乳がんの治療の後遺症に苦しんだ経験から、がん経験者のQOL(生活の質)を運動によって向上する活動を始めた。偶然知った米国のがん患者向けの運動療法に衝撃を受け、治療を続けながらプロのフィットネス・インストラクターの資格取得を目指した広瀬さん。新しい人生がそこから始まった。

(上)がん治療後のケアに運動を 45歳での乳がんが転機 ←今回はココ
(下)がん経験者に運動教室を開催 「NYに追い付きたい」

 都内のプライベートジムやスタジオで定期的に開かれる、体操やヨガピラティス、筋トレ、ダンス、ウオーキングなどのクラス。参加者のほとんどが女性だ。一見どこにでもある光景だが、参加対象はがんを治療中の人、あるいはがんの経験者に限られている。これらのクラスを主催するのがキャンサーフィットネスだ。

 「がんという病気は、治療が終了したらそれで終わりではないんです。その後の人生をずっと、治療の後遺症と一緒に生きていかなければいけない人がたくさんいます。でも病院を退院した後、そうしたケアをどうすればいいのか。かつての私自身のように、分からなくて絶望している人たちをサポートしたいという思いで、2014年にキャンサーフィットネスを立ち上げました」

 代表理事の広瀬真奈美さんは10年前、45歳のときに乳がんを手術。リンパ節を取ったためにリンパが流れにくくなってむくみが起きるリンパ浮腫などの後遺症に悩まされた。仕事が軌道に乗り始め、さあこれからというときの病気。さらに、夫の経営する歯科クリニックの補佐、育児、両親の介護と、激動の10年間を乗り越えてきた。

「かつて自分自身が苦しんだ『がん治療後』のケア。運動と学びによるサポートを広げたい」(写真提供:キャンサーフィットネス)
「かつて自分自身が苦しんだ『がん治療後』のケア。運動と学びによるサポートを広げたい」(写真提供:キャンサーフィットネス)