「がん経験者だからと容赦はしない」インストラクターの資格を取る
手術後の抗がん剤治療もまだ続いていたが、広瀬さんはフィットネスのインストラクターを養成する専門学校に入学。週に2日は座学、3日は実習のカリキュラムを受講した。
「これをやっていけば元気になれるんだ、と思っていたせいか、抗がん剤治療中なのに体調は良かった。髪の毛は抜けていたし、汗をかくのでバンダナを巻いた上からキャップをかぶっていました。周りは若い人ばかりだったので、みんなびっくりしていたんじゃないでしょうか」
しかし、インストラクター養成コースは厳しくもあった。
「ちょっと疲れて、息が上がって休んでいたら『帰っていい』と先生に言われるんです。相応の体力がなければ、プロのインストラクターにはなれない。がんの治療中とか関係ないと。容赦なかったですね」
その悔しさがバネにもなり、おかげで学ぶべきことはきちんと学べたと広瀬さんは言う。1年後、日本フィットネス協会のインストラクターの資格を取ることができた。
「すぐにMoving For Lifeに連絡をして『がん患者さん向けの運動の勉強がしたい』と言うと、ウェルカムと言ってもらえて。まずは1週間のコースを受講しに米国へ行きました」
米国ではMoving For Lifeの計らいで、コロンビア大学病院内の患者向け運動教室を見学したり、患者を集めて話を聞く場に参加したりしたという。
「日本にはない光景でした。病院内でも特に医師や看護師が見守っているわけではなく、患者さんたちが適当に来て、楽しそうに運動して終わると帰っていく。すごい、これを日本でも絶対にやりたい、と希望がどんどん大きくなっていきました」
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取材・文/秋山知子(日経ARIA編集部)